生活保護vsワーキングプア 若者に広がる貧困
ずいぶん以前に買っていたのだけれど、読んでいなかったこの本を、あわてて読んでみた。本のタイトルはかなり挑発的なのだけれど、実際の中身はいたって、真面目で、かつていねいなもの。
読んでみると、前半は、かなりまどろっこしい。生活保護の仕組みや、運用の実際から、この生活保護をめぐる問題の抱える困難さを提示する。一見すると、生活保護について否定的な意見とも思えるような書き方で、ずけずけと問題を明らかにする。ここで、理屈ではなく、ほんとうに、生活保護をうけている人に共感できるのかということを問いかけるのだ。そこには、なぜ、生活保護の現場で、この制度の質そのものに疑念をもたれるような事態が広がるのか、その専門家がどんどん減少し、支援者の空洞化といわれる問題が広がるのかということが解き明かされる。
後半では、では、実際にだれが、この制度から排除されているのかという、ほんとうの実態を提示する。排除されているのは、貧困が広がっている若者であり、もっともの被害者は子どもであると。そして、改めて、この制度が本来、何のために、どんな目的のためにあるのかということをふまえた運用方向を訴える。そこにむけた支援者の連帯の動きは、心強い。
ただ、本書は、たぶん、あえて、現在の政策動向などについては、基本的にはふれられていない。実態の問題をあえて、若者をめぐる問題に焦点を当てている。そこに違和感をもたれる方もいるのかもしれない。
しかし、何より、著者の一番の思いは、「あとがき」に書かれている。前半で、まどろっこしいと思ったら、まずあとがきに目を通してほしい。現場で働く専門家としての、とまどいや、ためらい、後悔の声は、やはり胸を打つ。こうした問題にあまり身近ではなかった人にも十分説得力のある内容になっている。
« セーフティーネット・クライシスII 非正規労働者を守れるか | トップページ | 成人は18歳?20歳?法制審部会、結論出ず »
「教育」カテゴリの記事
- 河野大臣「自由に働き方を決められる制度が大事」 希望者には“勤務時間の上限廃止”も 働き方の規制緩和を表明(2024.09.05)
- 小1の不登校が2年で倍増 「幼・保・小」の連携で対応(2024.09.01)
- 自衛隊、宮古・八重山や奄美に新拠点検討 2025年度の概算要求 訓練場や補給の適地有無を調査 2027年度には那覇に対空電子戦部隊(2024.08.31)
- 2学期がはじまっています(2024.08.29)
- 寄宿舎廃止後の充実策「根拠ない」「働き方改革に逆行」 識者が指摘(2024.08.27)
「読書」カテゴリの記事
- 「歴史抹殺の態度を変えさせなければ」8月31日に都内で関東大震災朝鮮人・中国人虐殺犠牲者の追悼大会(2024.08.25)
- 木原稔防衛相、終戦の日に靖国神社に参拝 韓国「時代錯誤的」と反発 :「ニライカナイには行けない」(2024.08.15)
- 9月号ができています(2024.08.12)
- 『沖縄県知事 島田叡と沖縄戦』と「島守の塔」(2024.07.28)
- 保護者「性急過ぎる」 那須と栃木の寄宿舎、年度末閉舎 方針に戸惑い(2024.07.11)
「政治」カテゴリの記事
- 河野大臣「自由に働き方を決められる制度が大事」 希望者には“勤務時間の上限廃止”も 働き方の規制緩和を表明(2024.09.05)
- 沖縄県の原告適格性、二審でも認めず 県は上告を検討 高裁那覇支部 新基地建設を巡る県と国の14訴訟で最後の係争案件 玉城デニー知事「残念」(2024.09.03)
- ほんとに、総選挙はいつになるのか(2024.09.02)
- 小1の不登校が2年で倍増 「幼・保・小」の連携で対応(2024.09.01)
- 自衛隊、宮古・八重山や奄美に新拠点検討 2025年度の概算要求 訓練場や補給の適地有無を調査 2027年度には那覇に対空電子戦部隊(2024.08.31)
「経済」カテゴリの記事
- 河野大臣「自由に働き方を決められる制度が大事」 希望者には“勤務時間の上限廃止”も 働き方の規制緩和を表明(2024.09.05)
- 小1の不登校が2年で倍増 「幼・保・小」の連携で対応(2024.09.01)
- 私の問題から、みんなの問題に(2024.08.28)
- 最前線 カマラ・ハリス氏の40分 最重要の見せ場で訴えた五つのポイント(2024.08.23)
- インクルーシブの対極の展開が十分に予想される(2024.08.22)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 生活保護vsワーキングプア 若者に広がる貧困:
» 沖縄ビッグニュースの明暗 [ようこそイサオプロダクトワールドへisao-pw]
◆師走の沖縄/光と影◆画像はクリックで拡大します。◆ビッグニュースの明暗◆諸般の [続きを読む]
» 景気の悪化いつまで続くの?ヤミ金相談が増加 [さくっとニュース]
出稼ぎ外国人、ホームレス餌食 ヤミ金相談、再び増加ヤミ金融に関する法改正で高金利契約などへの罰則が強化された平成15年以降、減少していた被害者支援団体への相談が、再び増加傾向に転じている。昨年、「大阪クレジット・サラ金被害者の会」(大阪いちょうの会)に訪れた相談者は17年の約1・6倍。出稼ぎ外国人や路上生活者を対象にした悪質業者による被害相談も寄せられるようになり、同会は「景気の悪化で増加している貧困者が狙われている」と警戒を強めている。 昨年9月2日、大阪市天王寺区の飲食店...... [続きを読む]
« セーフティーネット・クライシスII 非正規労働者を守れるか | トップページ | 成人は18歳?20歳?法制審部会、結論出ず »
コメント