日米開戦と東条英機
「シリーズ激動の昭和~あの戦争は何だったのか」と題した特集の2部で放映されたドラマ。一部は、まだ見ていない。
なぜ、あの戦争がはじめられたのかという問題を、政府内部、政府と軍部、政府と世論の対立と矛盾をとおして考えようと言うもの。そこにはいわゆる「統帥」の問題も、指摘されている。保阪さんが監修らしく、石井秋穂などがキーマンとして出てくる(保阪さんの『陸軍省軍務局と日米開戦』にくわしい)。が、どうも、面白いとは思えなかった。
なぜだろうかと、考えた。いくつもの理由があるとは思う。
統帥の問題にしても、何も、最初からそれが大きな問題であったわけではないのだろう。なぜ、そういったことが大きな問題にならざるをえなかったのかということがよくわからない。そこには、どのような戦前の戦争推進の国家が形成されていったのかという視点が欠落しているということか。
だから、必然的に、朝鮮半島の植民地支配はもちろん、満州事件から日中戦争で、いったい何のために、何を日本はしてきたのかということが、ほとんどまとめに分析されない。すでにこの段階で、凶暴な加害があり、一方で、兵士たちは追い込まれていった。
おどろいたことに、さらには、南方に進出していった実態がどうだったのかなどもふり返られない。戦争の実相を見ることなく、なぜ、この戦争をはじめたのかということを語ることは可能なのだろうか?と。
国民がどのように戦争に動員されていったのかなども、まともに描かれないし、日米和平に不満をもったと描かかれる将兵たちの実相なども何も明らかにされない。
結果は、「国民にも責任がある」「われわれは何も知らされていなかった」という堂々巡りの議論になってしまう。
本来、こういった大きな戦争につきすすむ構造や流れというものがあり、そういった問題を前提にしたり、追随したりするなかで、個々には葛藤や逡巡が矛盾として、表出した。その葛藤などをよく見ていくことそのものは、大事だとは思うけれども、その前提となる問題をよく押さえないと、彼らの愚かしさや限界などが、ちゃんと見えてこないのだはないのか。
ボクには、このドラマで描かれた、石井の葛藤も含め、あまり人間的な葛藤のようにも思えなかったし、共感もできなかった。昭和天皇の描き方も、どうなんだろう。中途半端で、問題をとらえてはいない。東条をはじめ登場人物が、ただただ薄っぺらく描かれて、リアリティもなく、ついていけなかった。
« 爆笑問題のニッポンの教養 我働く ゆえに幸あり? 教育社会学 | トップページ | 教科書:「基本法踏まえ採択を」 市民団体は反発--検定審報告書 »
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- 自民党総裁選への「現職」不出馬、菅義偉・前首相に続き2代連続…鈴木善幸氏や海部俊樹氏の例も(2024.08.14)
- 『沖縄県知事 島田叡と沖縄戦』と「島守の塔」(2024.07.28)
- 「奥能登に生きる〜2つの過疎の町と震災〜」(2024.07.21)
- 「膨張と忘却 〜理の人が見た原子力政策〜」(2024.07.18)
- 8月号ができました(2024.07.09)
「平和」カテゴリの記事
- 沖縄県の原告適格性、二審でも認めず 県は上告を検討 高裁那覇支部 新基地建設を巡る県と国の14訴訟で最後の係争案件 玉城デニー知事「残念」(2024.09.03)
- 自衛隊、宮古・八重山や奄美に新拠点検討 2025年度の概算要求 訓練場や補給の適地有無を調査 2027年度には那覇に対空電子戦部隊(2024.08.31)
- 関東大震災の朝鮮人虐殺、否定論やまず 公的記録、相次ぐ「発掘」(2024.08.30)
- 連載「未完」の辺野古 「辺野古移設は最悪のシナリオ」 在沖縄米軍幹部の語った本音(2024.08.26)
- 「歴史抹殺の態度を変えさせなければ」8月31日に都内で関東大震災朝鮮人・中国人虐殺犠牲者の追悼大会(2024.08.25)
「政治」カテゴリの記事
- 河野大臣「自由に働き方を決められる制度が大事」 希望者には“勤務時間の上限廃止”も 働き方の規制緩和を表明(2024.09.05)
- 沖縄県の原告適格性、二審でも認めず 県は上告を検討 高裁那覇支部 新基地建設を巡る県と国の14訴訟で最後の係争案件 玉城デニー知事「残念」(2024.09.03)
- ほんとに、総選挙はいつになるのか(2024.09.02)
- 小1の不登校が2年で倍増 「幼・保・小」の連携で対応(2024.09.01)
- 自衛隊、宮古・八重山や奄美に新拠点検討 2025年度の概算要求 訓練場や補給の適地有無を調査 2027年度には那覇に対空電子戦部隊(2024.08.31)
「歴史」カテゴリの記事
- 関東大震災の朝鮮人虐殺、否定論やまず 公的記録、相次ぐ「発掘」(2024.08.30)
- 「歴史抹殺の態度を変えさせなければ」8月31日に都内で関東大震災朝鮮人・中国人虐殺犠牲者の追悼大会(2024.08.25)
- 木原稔防衛相、終戦の日に靖国神社に参拝 韓国「時代錯誤的」と反発 :「ニライカナイには行けない」(2024.08.15)
- 自民党総裁選への「現職」不出馬、菅義偉・前首相に続き2代連続…鈴木善幸氏や海部俊樹氏の例も(2024.08.14)
- 第5福竜丸 株価 終値2200円以上値下がり 終値では過去2番目の下落幅(2024.08.05)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 日米開戦と東条英機:
» 「日米開戦と東条英機」 [blog mchzk]
12月24日、TBS系列で放送された「シリーズ激動の昭和〜あの戦争は何だったのか」の第2部。ビートたけしが東条英機役で出演。 感想を端的に言ってしまうと、「こりゃドラマだな」ってところか。 軍服姿のビ... [続きを読む]
« 爆笑問題のニッポンの教養 我働く ゆえに幸あり? 教育社会学 | トップページ | 教科書:「基本法踏まえ採択を」 市民団体は反発--検定審報告書 »
コメント