生きさせる思想 記憶の解析、生存の肯定
何というのかなあ、ものすごく興味深い人なんだよなあこの雨宮処凛さんという人は。いままで、思想家と呼ばれる人が問い掛けなかったことにぐいぐいと迫ってくる。もちろん、彼女のこれまでの人生の壮絶さというものもあうるけれど、その中で彼女が感じたこと、そこから引き出した結論というものが妙に、説得力がある。
この間、いろんな人と対談している。萱野さんとの対談も中西さんとの対談も、このブログで紹介したように、とても学ぶことが多かったけれど、この小森陽一さんとの対談もちがった面が引き出されている。
若者を「難民」化させる社会は、暴力と貧困が蔓延し、人々が思考停止させられ精神を病む社会でもある――プレカリアート運動に献身する作家・雨宮氏と、「九条の会」の事務局長を務める文芸評論家・小森氏による討論の記録。生きづらさ、テロと戦争、バッシング社会、ネット心中など社会病理の本質と、それをこえてゆく思想を熱く語り合う。
小森さんの独特の、しかも直線的な社会構造つなげ方は、それはそれで、大きな問題提起。そうかそうか、小森さんの現代の戦争観、新自由主義への対抗の戦略、なるほどなるほど、と。『心脳コントロール社会』などを思い出しながら、ああ、雨宮さんの言葉で、小森さんはこんなことを考えるのかと。
結論的なテーマは、「生存の肯定」である。はじめてこの本にふれた人はどう思うのだろうか。共感するかの、違和感を覚えるのか? そんな感想をたくさん知りたい本でもある。この「生存の肯定」というものにこめられている考えそのものは、ものすごく議論を呼び起こすようにも思えるのだけれど、同時に、たくさんのいまの社会の抱える問題の解決のためにヒントもあるような気がする。
とても刺激的な、ボクはやっぱり大きな共感をもって読んだ一冊だった。
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