歴史認識問題の原点・東京裁判
先日、判決から60年を迎えた裁判については、いまなお、論壇では議論の絶えない。それは、戦後日本の歴史認識問題の原点であると同時に、戦争犯罪の追及と国際的なパワーポリティクスの相克のもとでおこなわれたという事情から生まれる。本書は、この裁判についての最近の歴史学の研究成果をふまえて、わかりやすく解説しているのが何よりの特徴だ。その内容は、なによりも裁判が、日本が中国やアジア・太平洋地域で起こした戦争を「侵略戦争」と認定している点にその意義を見る。同時に、この判決を、戦争違法化と国際人道法の発展のなかでとらえるという点も特徴である。
それでもなお、この裁判について、日本の侵略戦争を正当化する勢力から連合国による「勝者の裁き」との批判がなされるのか。その背景には、天皇の免責や原爆投下など連合国の戦争犯罪が裁かれなかったという裁判の問題が存在するからにほかならない。本書は、裁判の積極的な意義だけではなく、一方で、日米支配層の合作で戦争責任を陸軍強硬派に押しつけて昭和天皇を免責し、戦争に同調した穏健派を戦後の支配勢力として温存した事実を指摘し、そうした議論の一面性を指摘している。
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