微笑と虐待~証言 アブグレイブ刑務所事件~
NHKスペシャルが、記憶に生々しいこの事件を取り扱った。
2003年にイラクで起きたアブグレイブ刑務所虐待事件。兵士たちが笑顔でイラク人収容者を虐待している様子を写した写真は世界を驚愕させた。事件発覚後に行われた軍法会議では、虐待・拷問は兵士たちの自由意志で行われたと認定。写真に映っていた、もしくは撮影した7人は全員が有罪、降格の上、軍を放逐された。しかし、虐待を命令したとされる軍上層部は罪に問われなかった。アブグレイブ刑務所がいつからどのようにして虐待の舞台になっていったのか、なぜ兵士たちは満面の笑みを浮かべて虐待・拷問に加わったのか、番組では、虐待をした女性の元上等兵、虐待写真を内部告発した元憲兵、そして刑務所の最高責任者だった元准将から生々しい証言を得ることに成功した。彼らの証言から浮かび上がってきたのは、アメリカがイラクの民主化という「善意」とテロとの戦いという「理想」を掲げる一方で、密かに進行していたアメリカ軍の狂気そのものだった。新たに得られた3人の証言や記録をもとに、アブグレイブ刑務所虐待事件の知られざる真相に迫る。
兵士たちは、堤さんの本のとおり、貧困から抜け出そうとイラクにやってきた。任務に忠実な彼らに、上層部は、本人たちが予定していた帰還ではなく、捕虜収容所での捕虜の管理を命じた。そして、テロとのたたかいをすすめるため、捕虜から情報をえるための、新しい拷問の形を、民間軍事会社なども動員し、つくりだす。そのなかで、おこったのがこの事件というわけである。
もと司令官の准将の最後の言葉が痛烈である。虐待をした彼らは許すことはできないが、結局、彼らは、責任を押しつけられたと。
アメリカの対テロ戦争の1つの本質的側面をたしかにうきぼりにしている。
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