迷走する若者のアイデンティティ――フリーター、パラサイト・シングル、ニート、ひきこもり
少し前に出された本になるけれども、関心をもったので読んでみた。心理学と言えば、問題を心という角度からとらえるから、若者の問題でのどうしても否定的な議論という印象をもちがちだけれど、若者の心の問題は、社会の反映。むしろ、心の問題をどう社会に開いていくかという角度から論じられている。
つまり、はげしい非正規雇用の広がりなど、若者が社会的な自立をはかっていくうえでの現実の困難がある。それについて、政策の側は、能力の問題、若者の意識の問題という角度から接近する。一般的にも、若者の社会的未熟さということに関心が行く。ほんとうにそうなのか。一見、否定的に見える若者の意識や心だが、その背景にどんな社会の現実の反映があるのかということを解き明かす。そこには、若者が自立していくうえでの、大人になる道筋の不確かさなど、現代的な困難さがある。それは大人社会の側の問題でもある。
ふさがれた若者期というイメージをボクなんかはもつのだけれども、その困難さと課題の解決への道筋、積極的な可能性など非常に示唆にとむ指摘が多かった。ひきこもりやニートなどの若者の臨床などから、実は、若者たちへの支援の共通した課題も見えてくる。居場所の問題や、家庭のあり方(それへの支援)、学校への提言等々。
一歩深めれば、その大人への道筋の過程にある、人間関係の悩みなどの問題への理解も見えてきそうだ。
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