フィンランドの高校生たちが人生について考えていること
本のタイトルとしては、結構、奇妙な本である。けれど、この本の特徴というか、本質をよく示している。
PISAテストで、「学力世界一」が注目されるフィンランド。では、そのフィンランドの子どもたちは、どんなことを考えているのか。もちろん、この本は、たった3人の高校生からの聞き取りだから、それですべてを示しているということはできないだろうけれど、でも、そこから見えてくることは少なくはない。
高校生の聞き取りを読んでいて、伝わってくるのは、一言で言えば”安心感”。大きなプレッシャーを感じている日本の子どもたちとは大きなちがいを感じる。やはり、子どもをそそがれる視線、そして、子どもをとりまく競争的環境というのが、大きなちがいなのだと思う。
もう1つ感じるのは、フィンランドの高校生たちの発言の大人っぽさ。これは悪い意味ではなく、社会的な視野と、地についた物の見方というのを感じる。学んでいることが、生活に、地域にねざしながら、世界にひろがっているというのはなるほどとは思う。
教師の役割が、フィンランドではとてつもなく大きい。「国民のロウソク」という言葉に代表されるように、尊敬を集める。その根底にあるのは、まちがいなく、子どもの必要におうじた教育をおこなうという理念にそこあるのだと思う。教育、そして、学問への信頼が国民的にあるからこそ、その豊かな活動を保障する。窮屈な日本の教育とはここでもちがう。
この本のいちばんのねらいは、日本は、ボクたちは、いまフィンランドから何を学ぶべきかと問う。そして、そのことを考えるとき、日本の教育のとりくみの何をいま大事にすべきかということでもある。
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ごぶさたしています。この本,わたしも先日読みました。高校生の会話がいいですね。このまま日本の高校生によんでもらって感想を聞きたいとおもってしまいました。フィンランドの教育について書かれている本から得るところは大きいです。苅谷・増田の両者の著『欲ばり過ぎるニッポンの教育』講談社現代新書もいいですね。
投稿: KATEK | 2008/09/22 06:43
ニュースでフィンランドの職業訓練校での銃乱射事件のことを知り、ちょっとショックをうけています。田中先生の本にもありましたが、かの国でも、新自由主義の流れはあり、いろいろな矛盾もかかえているということなのでしょうか? 真相はよくわかりませんが、一方的に美化せず、しかし、学ぶべきところはちゃんと学びたいなと思います。
投稿: YOU→KATEK | 2008/09/24 00:25