児童虐待 現場からの提言
この前、朝日新書を読んだことで、刺激をうけて、岩波新書のこの本を読んでみた。少し前、著者と会う機会もあったので。
いろいろ感想はある。個人的に、家族というものに葛藤をかかえて生きてきた人間にとっては、このテーマはかなりつらいものだし、具体的な事例をもとに書かれているこういった本は、読むだけでかなり疲れる…。でも、家族にかかわる苦しみをむき出しにした結果生まれたのが現在の”虐待”という問題だろうか。かつても、虐待はあったのだろうが、いまは極端な悲劇として現れる。
最初の児童虐待の定義。懲罰権の存在などははっとさせられる。たしかに国民的な合意が必ずしもない問題だけれど、そのスタートラインからこうもむずかしいのか。
児童相談所という現場でその問題にかかわってきた著者の目からは、現状に大きな責任をもつ政治にきびしい視線が注がれる。この間の法の制定と法改正を一定の評価をしつつ、それで十分かと問い掛ける。
1つは、問題に対処するシステム。なぜ、児童相談所という一機関に問題をおしつけるのか。そのことが解決を困難にしている点は確かに多い。
2つは、虐待の対応という専門性への軽視への怒り。読んでいて悲しく切なくなる事件が多いが、何よりも、子どもたちも、問題をかかえる親も、十分な支援がなされないこと。結局、子どもの権利の軽視は、実は、子どもに対応する専門家を軽視するこということが日本では象徴的なできごととしておこっているのではないかと感じた。それは、教師をめぐる問題でも同じことが言える。
3つは、貧困への支援も問題。この点でも、合意への課題は大きい。
正直、解決への課題の大きさにはたじろぐ。でも、こうした問題に抜本的にメスを入れることができない政治であることが、日本のもっとも大きな問題なのだと思う。そのことは必ず問われなければならない、そう痛感する。
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