非正規レジスタンス
職場の人から借りて、読んだ。I.W.G.P.シリーズの最新作。
女性受けのする甘いマスクの石田衣良は、扱うテーマは結構硬派なものもある。今回のテーマは「格差と貧困」。このまえ出したエッセイ集『傷つきやすくなった世界で』で、とりあげていたテーマでもある。
石田衣良の小説は、ミステリイ? ファンタジー? あまっちょろいし、あり得ないのかもしれない。それでも、実は、いま社会でおこっている現実のもっとも大きな問題を、正面から、だれよりも早く作品世界のなかで、みごとに描き出す。この本では「千川フォールアウト・マザー」で、シングルマザーを「見えない家族」と、そして「非正規レジスタンス」では、日雇い派遣を「透明人間」として、社会からの排除という問題をかなり的を射て描き出している。
「千川…」はほんとうに怒りに満ちている。そして、「非正規…」は、この間、明らかになった日雇い派遣の問題のエピソードををまさに、そのまま物語に取り入れている。不自然でなくユニオンも登場するところもさすがである。作品は、反貧困の人たちが「ため」とよぶ貧困に陥ることを防ぐ社会的文化的な資本を「バリアー」として、描き出すところも興味深い。自己責任論を押しつける、政治や社会への怒りに満ちた作者の視線=マコトの視線は、優しく、当事者への共感に満ちている。たしかに、あまっちょろいし、リアルでもないけれど、でも、マコトの活躍へは、やっぱり、応援したくなる。こうした作品は、きっとこの若者の問題を社会の共通した認識にしていくうえでも、大きな意味をもつにちがいない。
現代の『蟹工船』とはどのようなものなのか。吉田修司、桐野夏生…。石田衣良だって、ぜんぜん捨てたものではないよ。
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