君の涙ドナウに流れ ハンガリー1956
この映画も、映画館で見ることができず、結局、DVDで見ることになったけれど、映画館で見るべきだったなあと、つくずく後悔している。
物語の舞台は、ハンガリーのブタペスト。ドナウの真珠とよばれる美しい街だ。後世、ハンガリー動乱とよばれたソ連の圧政への抵抗と蜂起、ソ連による弾圧の経過を、女学生の活動家ベィキと水球のオリンピック選手・カウチの愛の物語として描く。そこに、”メルボルンの流血戦”をからめて物語は展開する。ちなみに、2006年にはこの流血戦について語られるドキュメント映画、『Freedom's Fury』が公開されたが、そこでナレーターをつとめたマーク・スピッツ(フェルプスが今日8個目の金をとるまで、金7個の記録をもっていた水泳選手)は、少年時代に、カウチのモデルとなったザドルに指導されていたという。実際の水球の試合では、ハンガリーの水球選手が参加しているという。北京オリンピックの日本での中継では、水球の試合など見られるのだろうか。
映画は、ラストでこう問いかける。「私たちは忘れない。自由のためにどれほどの血と涙が流されてきたかを・・」。映画を見ながら、いろいろなことを考えた。ソ連の蛮行と冷戦という問題。ナショナリズムという問題。一見、単なる冒険主義ともいえるような学生たちのたたかいをボクらはどう受けとめるのか。政治とスポーツ・オリンピックという問題。こうした作品をつくるハンガリーの映画は、ソ連初期の映画づくりの積極的な伝統をうけついでいるとも言えるのだろうか。
どれ一つをとっても、単純に白と黒をわけることのできない問題を内包している。だからこそ、その背景を丁寧に追いたいし、映画自身も、ていねいにつくられて好感ももている。
自由を奪う圧政も暴力もない社会をどうつくるのか。3カ月前に見た、光州5・18にも重なりながら、そう受けとめた。
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