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2008/04/09

日本人の目から見たチベット通史

31629425 お約束のチベット問題だけれど、結局、今日もこの時間になってしまって、十分な書き込みはできない。ただ、ある人から紹介されて読んだ、この本の感想を少し書いておく。チベットの歴史なんて本当に知らなかったので、なかなか面白かった。
 ただ、本の受け止めは、紹介してもらった人とは、ちょっとだけ違うかもしれない。

 チベットの「独立」という問題は実はなかなか議論のやっかいな問題だ。民族自決権と一口に言っても、その理解や議論は、いろいろなレベルがある。外的に支配された植民地の独立は、国連における議論でもほぼ無条件に承認をされてるわけだけれど、国家の内部の民族の問題は、これはなかなかややこしい。領土保全の原則というものもあるからだ。現在の国際法の理解では、内的な自決権、高度な自治を認めるというのが共通の理解だと言っていいのだと思う。
 ならば、チベットの問題は、どう理解すればいいのか。歴史的な経緯、そして国民国家の形成期の事態、そこへの国際的な認識、こう考えると、簡単に「独立」ということが国際的な合意になるとは、あまり思えない――そんな感想を正直、この本を読んで思った。――こう書くとかなり誤解を生じるかもしれないけれど、中国のような他民族による雑多な国家形成の歴史をもつ国の問題はなかなかややこしい。清朝や中華民国時代の経緯を見てもそれは言える。
 ダライ・ラマ14世も、かならずしも独立を主張しているわけではない。高度な自治を主張しているのだから、現実政治のレベルでも、まず、そこが対話の出発点になるのだとは思う。そのことへの、中国政府もふくめた当事者のしっかりした認識は求められるのだと思う。

 もちろん、だからといって、現在のチベットをめぐる問題のなかで、人権抑圧・弾圧という問題はあいまいにできない大きな課題なのだと思う。ましてや、(実は、今日のこの書き込みもこんな時間になったのは、BS世界のドキュメンタリーの「シリーズ毛沢東」の再放送を見ていたからで、そこでも今日出ていた)毛時代の人権抑圧は否定のできない歴史的な事実で、そのことの十分な総括のないなかでの、現在のチベット問題があるのだと思う。ダライ・ラマが高度な自治を求めながらもインドに亡命したのも、その毛時代である。
 まちがいなく、今後の中国という国の発展にとって、この人権の問題は、大きな歴史的課題であるのだと思う。

 ただ、メディアの報道を見ていて、ややこしいなあと思うのが、「独立派」対強硬姿勢をとる中国政府という図式で報道されていることだ。たぶん、チベットの民族派のなかでも、さまざまな意見の対立があって、必ずしもダライ・ラマのもとで一枚岩ということではないのだと想像できる。たぶん「独立」を主張する人々がすべてではないのだと思う。それだけに、中国政府の側が、強硬姿勢一辺倒の姿勢であるならば、解決を困難にするのだと思う。しかも、オリンピックの聖火リレーをめぐっての事態は、展開によっては、中国の都市部の住民とチベットあいだに、深刻な対立を生み出しかねない事態にもなっている。政府の側のイニシアチブで、対話に足を踏み出せるのか? それは、中国の今後の発展にとっても、かなり大きな問題になりそうな気がする。

 何度も確認するけれど、中国の未来にとって、人権と民主主義の問題は大きな課題である。それは、単純な国内問題ではなく、国際社会が注目している問題でもある。Nスペの「激流中国」なども見て、いつも中国には、単純に判断できないいろいろな感想をもつのだけれど、それだけに、オリンピックに向かう中国政府の営みを注目したいと思う。

 本の内容から離れてしまったけれど、そんな複雑な思いを持ちながら、この本を読んだ次第。

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コメント

ご無沙汰しています。
チベット問題。いま、勉強が必要だと思っていた分野でした。この本も探してみたいと思います。
YOUさんの感想を読んでも、二重三重に複雑な問題なんだということを認識しました。主権国家内の「民族自立」というそもそもの問題にくわえ、オリンピックをからめた問題、日本のマスコミの報道姿勢という問題、中国自体の毛一派の負の遺産という問題、さらに中国が抱えている問題とともに「反共」という思惑も絡むかに見える問題などなどです。
同時に、いま喧伝されている問題との関係では、ダライ・ラマ自体が、チベットの独立を求めていないし、平和的な解決を求めているし、さらにオリンピックへの妨害も批判している、という点では、中国政府の姿勢次第で解決に向かう様な気もしています。
よくつかんでおきたい問題ですね。

 自分なりの解釈です。ここまで書いて良いのかなあなどと思うのですけれど(笑い)。この本を紹介してくれたMさんみたいに自由な身ではないので(苦笑)。
 ただ、日本のメディアの報道は、ちょっと異様なようですから、ちゃんといろいろな情報をつかんで、よく考えたいですね。

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