友だち地獄 「空気を読む」世代のサバイバル
この人の書く本は、いつも面白い。これで読むのは三冊目、『<非行少年>の消滅』(信山社)、『「個性」を煽られる子どもたち』(岩波ブックレット)に続いて。ただ、この本は、たぶん紀要などに掲載した論文を集めて、書き直しているためか、かなり重なり感や、くどさを感じるところはあるのだけれど。
若者たちの「生きづらさ」の実相を追う。もちろん、現在のそれは、貧困と格差の広がりのなかで語られることが多いのだけれど、あえて筆者は、その面を捨象して、若者の「優しい関係」という面に焦点をあてて論じていく。こうした論じかたは、それはそれで納得はできる。
著者は、いじめを生み出す背景に「優しい関係」に注目する。ここは面白い。そして、そこで注目しているのが、「自己肯定感の低さ」と「孤独感」。こうして、高野悦子と南条あやの青春日記やケータイ小説、ケータイそのものの役割、ネット自殺などが示すものを明らかにいく。まあ、ここまで解き明かしてもらっれもなあと、ちょっとくどさもあるけれど。
「誰からも傷つけられたくないし、傷つけたくもない。そういう繊細な『優しさ』が、いまの若い世代の生きづらさを生んでいる。周囲から浮いてしまわないよう神経を張りつめ、その場の空気を読む。誰にも振り向いてもらえないかもしれないとおびえながら、ケータイ・メールでお互いのつながりを確かめ合う。いじめやひきこもり、リストカットといった現象を取り上げ」ていく――これらはなるほどの納得だが、では、なぜ、こうした関係がつくり出されたのだろうか。今日の教育政策や現在の新自由主義についての言及はあるけれど、もう少しその点を聞きたいところ。社会科学とのコラボなどもしてもらいたいものだけれど。
あとがきがなかなかいい(笑い)。世代的にも心情的にも、ちょっと似たところがあるのだろうか。
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