子どもの貧困 お約束の感想
分厚い本なので、ちょっと読むのに時間がかかりましたが、この本を読んだ感想です。編集者の意図がはっきり示された、みごとな本だと思います。昨年、教育関係で、見るべき本がないと言いましたが、この方がつくった本が2冊ほど、面白かったのです。お詫びします。
さて、感想です。ここでとりあげられている「子どもの貧困」は、その事態の全体を網羅したものでは決してない。むしろ、どちらかといえば、その底辺に位置するような子どもたちをめぐって、書かれている。しかも、それは、福祉施設など施策によってケアされるような事例を中心に書かれていて、実は、その裏には、まだ見えないような困難があることも予想される。
しかし、あえて、客観的な数字などデーターによる分析を中心にするのではなく、実践者や運動家による、実態の告発を中心に編んでいることが、この本の成功のポイントでもあると思う。編者の松本さんは、「貧困は見ようとしなければ見えない」ということをあとがきで書いているが、子どもの貧困は、見えなくされていて、意識的に見ようとしなければ、見えないことが何よりもその特徴にある。その姿をあえて、実態の事例で告発する。
あえて、事例で告発するが、同時に、この貧困という問題は、1つの告発がなされれば、それと同時に、他の事例は個別化され、縁辺化され、見えなくされる。だからこそ、徹底した告発が必要になる。その努力をあえて、この本では多角的におこなう。
その内容も、子どもの成長、子どもの安心にとって、いかに「貧困」はそれを侵し、また、その「貧困」を再生産させ、固定化するのかという視点で、突き刺す。あえて、それが子どもの共同的な学びにとって、どのような問題なのかということを排して、まず、その子どもにとっての問題に焦点化していることもその特徴であるとも感じた。
ボクらは、こうした問題提起をどう引き受ければいいのか? そのことを考えながら読んだ。
いまだ、十分に議論がなされたとは言い難い、子どもの貧困。給食費だとか、保育料だとか、実際には、バッシングのほうが多く、安易に、入学金の払えない子どもを、入学式から排除するようなことがおこなわれる現状がある。その対策も、緊急の措置と、社会の本質的なあり方から議論すべき問題もある。
知恵が必要であり、もっと多角的な専門的議論が必要である。何よりも、子どもの貧困が個別化、縁辺化されているもとで、そもそもどう連帯や共同をつくることができるのかという本質的な問題もある。襟を正して、引き受けることが必要な課題でもある。
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