ひきこもりの若者と生きる―自立をめざすビバハウス7年の歩み
全国に数十万と言われるひきこもり。もう少し、この問題、そして若者の自立や就労支援の問題を考えてみたくて、この本を読んでみた。著者たちは、北海道のビバハウスで、若者たちと毎日の生活を共にしながら、彼らの再起と自立への道を探り続ける元高校教員夫妻だ。俊子先生が、北星余市の教師の職を辞し、若者とその家族の苦悩に寄り添い続けてもう7年が立つ。その記録である。
一口で、ひきこもりというが、この問題が社会的に光があてられはじめてからまもなく10年の年が立とうとするが、いまだその実数すらわからない。もともと複合的な要因があげられ、そしてその実態も、たの領域と重なりあるように広がっていくので、実は、定義すらむずかしい。それが逆に、さまざまなバッシングの材料を与える余地をつくることになり、社会的な理解もなかなかひろがり切らない。
この間、厚生労働省や内閣府がすすめてきたような政策のすべてが誤りだとは思わないし、これまで十分に手が届いていなかった分野に光をあてた重要な意味をもった面も少なくはない。でも、限られた予算のなかで展開されるこれらの政策の多くは、実態にあったものとは言い難く、やはり最も困難な問題は、家庭と、そして支援する市民の運動に押し付けられるという限界のなかにある。
そのなかでの安達先生たちの奮闘の記録である。いくら、本のうえで引きこもりなどの問題を学んでいたとしても、なかなかリアルにはその実相はわかり難い。自分の想像力の弱さや限界などの痛感されるほど、先生たちの実践の記録は生々しい。いまある若者たちそのものの姿を、リアルに丸ごと、そして豊かな想像力をもってうけとめる。
俊子先生は、文字通り、高校の生活指導の先生の実直さで、若者たちによりそう。いろいろ教えられることの多い佐藤洋作さんのところの雰囲気とは一味も二味もちがい。それを支える豊かな人間関係には、おどろかされる。このようにして、いま日本では、引きこもりの問題に向き合う人たちがいる。
ここまで書けば、安達先生が、あのヤンキー先生の恩師だったということを思い出す人をいると思う。この本は、ビバハウスのかつての通信を中心に編集されているので、本のなかでも何度か義家氏が登場する。このような愛情をあふれた先生と現在の義家氏のあり様との落差は、少し痛々しいし腹立たしい。掲載されている通信の最後に、若者への思いをつくがえさせられることがたびたびあったけれど、若者たちの成長と父母の温かさに支えられてきたと書いている。義家氏への思いにはふれていないが.…。
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