検証地位協定 日米不平等の源流
少し前に毎日新聞で、欧州総局の町田記者が書いた、記事が話題になって、少し論争にもなった。その記事とは次のようなものである。
発信箱:欧州からみた米兵事件=町田幸彦ずっと気になっていたことを米国に問いかけたい。在沖縄米海兵隊員による女子中学生暴行事件の報道を知り、改めて疑問を抱いた。
どうして駐留米軍はヨーロッパで規律がしっかりしているのに、アジアの一角・日本になると米軍関係者の凶悪事件がなくならないのか。
例えば、英国にも駐留米軍約1万人がいる。でも「米兵やその家族による事件など聞いたことがない」と周囲の英国人は言う。無論、沖縄で起きた悲惨な事件が他国でも……という話はあってほしくない。…
その後、町田記者は、「その後、欧州でも米兵の強姦(ごうかん)事件があったという読者の指摘をいただいた。確かに過去に事件はいくつかある」と訂正をしているが、それでも、「沖縄県では昨年の米軍構成員の刑法犯検挙数が46人に上る。これと比較できる資料も必要だが、日欧で米兵の行動に差異があるのか」と、沖縄の事件の多さに注目している。たしかに、正確な資料があるわけではないが、そのことを十分推測させる数字はあるようだ。
正確な数字は、メディアでの報道に期待したいと思うが、世界のメディアはこの問題に注目をしていて、知り合いの沖縄関係者のところにも、外国のメディアがなぜ沖縄で米兵の犯罪は多いのかという取材がきたといっていた。
もちろんそれにはさまざまな理由はあるだろうけれど、とりわけ占領の継続という、沖縄の戦後史とは切っても切り離せないとは思うのだけれど、その結果としての、日米地位協定の異常性というものにはもっと目を向けるべきだと思う、これだけ、その改定に、沖縄の思いは強いのに、本土の政治の場面ではそのことが語られることはほとんどない。
3年前に出版された『検証地位協定 日米不平等の源流』を改めて読んでみた。この本は、琉球新報が、外務省の秘密文書である『日米地位協定の考え方』という解説本をスクープしたときの連載を本にしたもので、その年のJCJ賞なども受賞している。
沖縄が日本に返還され、米軍の直接統治から、地位協定の適用がなされるようになったさい、いかにアメリカの利益を守る方向で地位協定の解釈をおこなうのかということで苦心してつくられたのが『考え方』だという。
さて、この本は、その『考え方』に書かれている内容の解説と、実際の地位協定の運営の現場からのリポートからなる。あらためて読んでみて、この地位協定が、現在の国際法の常識とは乖離した、その地域の住民の人権などをまったく配慮しない、隷属的な内容であることとともに、その運用において、日本政府が、いかに住民の方に顔を向けるのではなく、アメリカに顔を向けているのかについて怒りをもつ、
基地での環境汚染、基地や訓練(飛行地域など)の特権、米兵犯罪捜査における特権、生活上の特権、そして、予算の支出におけるアメリカ追随…。
事件が起きれば、われわれは関心をもつ。しかし、その怒りが慣れっこになったり、ついつい、他の問題にかき消されたりはしていないのか。強く反省をさせらる。なぜなら、ここには明らかに住民の人権をふみにじる構造があるのだから。県民大会が「米兵によるあらゆる事件、事故に抗議する県民大会」として開かれるいま、もう一度、日米地位協定の問題についても、ボクらは真剣に考えるべきだと思う。
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