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2008/02/17

新版 母の遺したもの 沖縄・座間味島「集団自決」の新しい事実

87498394 著書も思いもよらぬ事態の展開で、歴史修正主義者たちの主張の材料につかわれ、そして、教科書検定へとつながり、話題の書になった旧版を、あらためたもの。

 ぜひとも読んでおかなくてはと思って読んだが、沖縄戦の実相が非常によくわかる一冊になっている。いろいろ言われることになった座間味島の「集団自決」であるが、その「集団自決」から生き残った祖父母と母をもつ著者が、「母の手記」を原点に、30年をかけて聞き取った住民の証言を集大成したものと言え、その真実が見事に再現されていると言っていい。
 座間味は、陸軍のマルレという水上特攻艇の秘密基地とされ、住民は、労働力として他のどの地域にもまして軍民一体を強いられていた。米軍がくれば女性は強姦され…などの意識が植え付けられ、軍が秘密保持のために、米軍が上陸すれば住民に自決をすることを指示していたということもうなずける。

 とjころがこの本の「母の手記」にある、前夜、元隊長に会いに行ったときそのときには、軍命はでなかったという趣旨の記述を証拠として、元隊長らが、自分は「自決」命令は下していないとして、『沖縄ノート』の著者・大江健三郎氏と発行元の岩波書店を「名誉毀損」で告訴し、さらに文部科学省もそれを受け、歴史教科書の検定で、軍による「集団自決」への関与・強制の記述を削除させるこということになる。

 著者が、新版を出した動機について、2つのことを書いている。1つは、この間の住民から、すでに「軍命」があったと確信できる証言が新たにあったこと。もう1つは、軍の関与の否定派が言う、戦後に補償をもらうために軍命はつくられたという説が、戦後直後の厚生省の調査の段階で、すでに座間味の住民は準軍属あつかいされ、その根拠がないことの2つである。

 歴史が風化すれば、歴史を修正する人の活動の余地は広がる。それだけに、ボクらの世代は、あの戦争の体験に真摯に向き合い受け継ぐことが責務であろう。軍の秘密基地となり、軍との一体化、そして自由をうばわれた住民たちに残されたものは、まさに「玉砕」(このことばは軍の言葉である!)というにふさわしい。読んでいて、気持が悪くなるほど、厳しい困難を住民たちは強いられていたのだ。「集団自決」をもたらした軍の命令・強制を疑問の余地なく明らかにした一冊である。

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