没後50年 横山大観――新たなる伝説へ
午前中から、六本木の新国立美術館に、「没後50年 横山大観――新たなる伝説へ 」展を見にいってきた。結構、混んでいた。
横山大観は、いうまでもなく、日本画の大家。「朦朧体」と呼ばれる独特の画風を確立し、国際的にも大きな評価を得たという。なるほど、独特のぼかしと時として鮮やかな色やくっきりした墨で描くその世界は、日本画の革新にふさわしいものだったのだろうと思う。
同時に、大観と言えば、もともと水戸藩士の家で生まれ、自身が生粋の天皇崇拝の国家主義者、国粋主義者で知られている。何年か前に、全作品が発見され、その美術展にはボクも行った「海山十題」は、その絵を売却したお金を戦闘機をつくるために国に納めたというぐらいの人物だ。
そのほか、富士山なども好んで描いたという。
今後の展覧会を見ていて、若いころの大観に作品には、模写なども少なくはない。伝統の上に立った革新というものが、国粋主義の思想に裏付けられて、大観の絵はつくられていったのだろうなと感じてしまう。題材も、富士山を中心に、中国からとったものなど日本画の伝統のうえにある。それだけに、ごく初期をのぞいて、生きいきした人間の姿などは登場してこない。正直、ボクは、大観の絵を見て、うまいとは思っても、心を打たれるということはなかった。
会場から出てきた、年輩の人たちの多くは、大観の作品を称賛している。そのことばにも、ボクはものすごく違和感を感じる。没後50年というのはわかるが、いまなぜ大観なのか。彼の絵は、どう考えても、その思想とは不可分なものだし、「彩管報国」という芸術への姿勢が、大観の絵をすごく俗っぽいものに貶めてしまったとしか思えないのだ。その絵に反映した、彼の狭さ、もろさというようなものにしっかり光をあてることぬきに、大観の絵の評価できるのだろうかと。
絵は、ある意味で、技巧というものは先に立つのだろうか。他の、戦争に協力した画家への評価についても、共通して感じることなのだが、それでも、そこにある精神の狭さやもろさは、必ず絵には反映し、それが鑑賞者に伝わると正直思う。つまり、評価がぶれていないのか。そんなこともつくずく感じるのだけれど。
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