ルポ 貧困大国アメリカ
面白かったです。一気に読むことができました。彼女の本の紹介は、二冊目だけれど、読んでいて、視点の良さ、取材の多彩さには感心させられる。単に若さだけではない、豊かさがある。
冒頭から、サブプライムの被害者を取材し、アメリカに広がる「貧困ビジネス」を告発する。
第1章で、貧困が生み出す肥満国民と題して、アメリカの貧困の実態を食生活を通してさぐる。つづいて、ハリケーン・カトリーナの被害で明らかになる棄民と排除を、そして学校の民営化。ショッキングなのが、一度の病気で貧困層に転落する人々の姿に見るアメリカの医療事情。市場化が何をもたらしたかを明らかにする。そして一番の被害者が若者たちだ。「落ちこぼれゼロ法」という名の裏口徴兵政策、若ものが兵役にかられる背景にある民営化される学資ローンそして入隊しても貧困から抜け出せない実態…。さらにワーキングプアが支える「民営化された戦争」。
考えてみれば、サブプライムと新自由主義は、同じコインの表と裏。そしてそれが戦争を支え、戦争を準備する。
これは日本の近未来というのではなく、大半は日本でも同時進行で起こっている問題であることをよく見る必要があると痛感する。アメリカでは現在大統領選の予備選が進行中だけれど、民主党が注目され、女性や黒人の候補者が注目をあびるのには、こうしたアメリカ社会の実状が反映している。と、同時に、この大統領選では、こうした社会から排除された人々の問題に真に向き合われるわけではない。
惜しむらくはアメリカの全体像のなかで貧困の問題をとらえたいところ。ただ、それは別の仕事。こうしたルポに刺激をうけて、よりアメリカや日本の社会の全体像と新自由主義の問題に迫れるような分析と、をと思う。
あとがきがまたいい。「1つの国家や政府の利害ではなく、人間が人間らしく誇りを持って幸せに生きられるために書かれた憲法は、どんな理不尽な力がねじふせようとしても決して手放してはいけない理想であり、国をおかしな方向に誘導する政府にブレーキをかけるために私たちが持つ最強の武器でもある。それをものさしにして国民が現実をしっかりみつめた時、紙の上の理念には息が吹きもまれ、民主主義が成熟しはじめるだろう…」
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