日本は没落する
最近よくテレビに登場する榊原英資が昨年末に出したこの本を読んでみた。よく知られているように元大蔵省の財務官である。
彼の本は、金融ビッグバンが政治の舞台に登場したころよく読んだ覚えがある。久しぶりに読んだのかもしれない。
さて、この本を紹介する前に、このブログのルールとして、読んだらいいよというお薦めの本だとか、読む価値はあると思う本は、写真を入れるようにしている。したがって、この本は、写真は入れないでおく。まあ、さすがに金融の専門家である。金融の話をしている分には、なかなか勉強になる(それを同意するかどうかは別として)部分はかなりある。そこから離れて、一般的な政治論評をしているところにも、うなずくべき点はすくなくない。たとえば、農業の自給の問題だとか、国家に戦略というものがないということだとか。大学をもっと強化すべきだだとか、教育予算をふやせとかもそのとおりだ。まずアジアとの友好を考えるべきだとか。
でも、全体として違和感が残る本なのである。
それは、何か。やたらと官と政の協力を強調する。それは、その分には間違ってはいないけれど、その立脚点が、いわば少数のエリートの協力という点なのである。何というか、やはり能力と志のあるエリートが日本の舵取りをするべきなのだという視点だ。
だから、そこからは決して、格差だとか貧困の問題が現在の日本の大きな問題だというとらえ方はでてこない。高等教育の改善を指摘しても、学費の無料化などには言及はない。
市場原理主義やゆきすぎた新自由主義については、批判するが、競争は必要だという、だからそのための改革が必要だと。だから、資本の本性から来る競争の歯止めは明示しない。だから、どこが「構造改革」を主張する人々とちがうのかはまったくはっきりしないのだ。それが、「自分はちがうよ」という穏やかな顔で、つつまれている。
そこからくる改革の姿は、増税であり、国の競争力に傾斜する経済政策であり、よりいっそうの金融の国際化である。
まあ、評価はむずかしいのだろうけれど。ボクらが望むような社会像では決してなさそうだ。そんな居心地の悪さを、ただただ感じてしまうが、彼の、政権批判には耳を傾けたいとは思うのだけれど。
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