状況への発言
そのうち、時間がとれれば、ちゃんときっちりした紹介と論評をしたいと思う本である。著者の高橋さんは、ボクとは世界観的な基礎は違うけれども、現在、もっとも尊敬する哲学者の1人である。思考の対象とする問題を的確に定め、重厚に、同時に、鋭く語るその語りは、この本でも貫かれている。表題にあるように靖国と教育の問題を中心とした発言集だけれど、しっかりした知識のうえに、柔軟でなおかつ、広い視野からの発言には唸らされる。
なぜ、彼は、このような発言ができるのか。この本を読んで、誤解をおそれずに言えば、みずから自身が、歴史的な存在、歴史のある一コマにいる存在だということへの強い自覚ではないのか。そのみずからの思考の制約への、疑問がより柔軟で、より広い視野への彼を導いている。そんな気がした。前半の、靖国や教育への発言も学ぶところは多いが、後半の韓国のハンギョレ新聞への寄稿や、「全ての人に知らしめよ」などは圧巻である。
まず、読んで自分の思考の薄っぺらさに頭をなぐられる。続いて、うだうだとそんなところにとどまっている自分に後ろから思いっきり押される。そんな感じがした。ちょっと、本題からはなれるかもしれかいけれど、自分ももっと、勉強し、いまの自分の思考にとどまらないような自由な議論もして、新しい発見や探求をしよう。そんな思索の態度への刺激をうける本でもある。
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