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2007/12/18

ぼくの言いたかったこと

 TBもいただきましたが、昨日のワーキングプアⅢは、好評だったようです。たとえば、紙屋研究所さんの、この番組への感想はみごとなものがああります。よくもまあ、短時間で、ていねいな分析的感想をかけたものだと、いつもながらこの若き後輩くんの能力には感服します。
 彼の論じていることには異論がありません。しかし、それでも、私は、彼の評価とは別の次元の問題として、この番組に、一定の留保をつけたいと思うのです。それは大ざっぱに言って、2つの理由があります。1つは、アメリカや韓国が日本の未来だという認識の問題です。すでに、日本の新自由主義「改革」の進行は、かなりの段階にきているという認識をもっています。非正規雇用の問題1つをとっても、全体では33%ですが、若年労働者にかぎれば50%を超えています。一方で、正規雇用に広がる成果主義、長時間労働の蔓延を考えると、はたして先の認識にとどまっていいのかということがあります。もちろん、提示されているような労働法制上の問題では、未来という側面はあるのでしょうが。もう1つは、新自由主義批判を、なぜ韓国とアメリカの知識人に語らせるのかという点です。もちろんⅠとⅡで、あるていどのことを語ったという自負はあるのでしょうが。では、なぜ、今回紹介されていた2つの事例(30代のホームレスのその後と、釧路の就職自立支援プログラムの例)の背景にあるものへの言及はないのかという点です。
 制作の春原さんのやや長めのお話を聞いたことがあります。非常に有能でしかもセンスのある方だと思います。それだけにスキのない、したたかな番組をつくられる方だと思います。そのことが婉曲さにつながっているのではないのかと。もちろん、何度もいいますが、私はこの番組を評価もしているし、学ぶべき点も多かったと思っています。でも、この留保という点に関して言えば、アメリカでもイギリスでも、おこなわれている施策は、いまでも新自由主義的な「改革」とせめぎあいながら行われています。そのこと捨象されていることのもつ意味も考えざるをえないのです。


 今日、若ものたちと会話をしても感じたことなのですが、日本で若者たちに生きづらさを感じさせているのは何なのかということを考えさせられます。私はその1つに、日本の社会を覆う括弧付きの「中立主義」というレトリックがあるのではないかと感じています。私は、こうした深刻な貧困や暴力には反対だということは一応は表明する。しかし、グローバル社会のなかでは能力による競争は、慎重ではあらねばならないけれども、あるていどは必要ではないのか。テロの時代には、武力によるテロの抑止と対処が必要ではないのか。といったたぐいの議論などです。あるときは、善意から出発し、善意のまま議論がすすめられます。あるときは、完全な議論のすり替えがおこなわれます。一昨日は南京シンポに行きましたが、ここでなされたような議論が学会でされることはありません。南京事件は歴史的事実だとは思うが、否定の議論につきあうのはどうも政治的でと言って、距離をおく、こうした傾向も、「中立主義」の典型的な現れでしょう。そのことが、歴史の問題や社会の問題でも、いろいろな疑問を感じながらも、真理に若者が接近することの障害になっているということに、「中立的」な学者さんたちはあまりにも無自覚なのではないでしょうか。
 貧困と格差の問題でも、戦争の問題でも明らかに若ものたちは、きびしい生の現実に直面をし、傷ついています。そのときに、その現実の背景に、ほんとうにどこまで迫ることができているのかということについては、私たちは、常に真摯で誠実であらねばならないと思うのです。少し、番組の問題にもどせば、もちろん、同様の「中立主義」だとは言いませんが。婉曲にとどまる映像に対して、「留保」と私が表現するのはおかしくはないのではないでしょうか。これは春原さんには無理な注文なのかもしれませんが、なぜ日本の大企業の横暴を告発しないのか、なぜ、日本の政治の大企業支援の中心のあり方を、もっとはっきりと批判しないのか、ということなのです。


 もう1つは、若者と話していて、感じるのは、彼らが、とりわけ、新自由主義的な能力主義、メリトクラシーにもろに曝されて生き、苦悩しているという点です。そのもとで分断され、孤立した中で生きずらさを感じているという点です。今日は、詳論する余裕はありませんけれど。ただ、いまの若者についてシニシズムというくくり方をする方もいます。私が感じるのは、その諦めに似た表情の裏側にある、悩みや葛藤が封じ込められているという状況の深刻さです。そのことは、若者にひろがる鬱やひきこもりと多分無関係ではないと思うのです。
 だからこそ、いま私たちは、新自由主義なるものに、どう批判的に向き合うのかということが、強く求められていると思います。この点では、私たちの誠実さと真摯さが問われていると思うのです。
 ただ、こうした私の思いを、若者たちに押しつけることは間違いだと思います。むしろ、若者たちとともに、問題を考えていく上では、春原さんの番組がおこなったような、外国の事例などもふくめて、十分な材料も提供し、ともに考え語り合う姿勢が何よりも大事なのだと思います。その点では、彼の、7月にクローズアップ現代で放映された沖縄戦の教科書の記述の問題の番組もすばらしかったと思います。そうしたことにも学びながら、私は言いたかったことは、私たちはそこにとどまっていてはいけないということなのです。

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