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2007/12/16

南京事件70周年国際シンポジウムin東京

20071215114330 昨日と今日は、南京事件70周年国際シンポジウムに行ってきました。プログラムは先日紹介したとおり。2日間で、ものすごく密度の濃い内容のものが凝縮されて、正直ヘロヘロに疲れました。昨日は、それでブログの更新もできず。
 1日目は、アメリカのコーネル大学の歴史学者・マーク・セルデン教授の記念講演からはじまる。歴史認識をおこなう枠組みということを問い掛けます。日本が戦後、南京事件などへの認識を国民的レベルでおこなうことを阻んだのがアメリカであること。その背景には、アメリカの国際法認識というものがあること。アメリカに依存した日本の戦後政治の結果、今度は、そのアメリカから歴史認識を問われていること。こういった大きな視点からの話でした。おそらくベトナム戦争世代。ダワー氏などとも同じ世代なのだろうか。アメリカの歴史学者の広い視野と、するどい物言いには、脱帽である。
 お昼は、軍事史研究者のTさんと食事と、おしゃべり。会場でT大のI先生に挨拶。「京都の人」って覚えていた。同い年で、同じ時期に同じ予備校にいたことで、前回お話を伺ったときにもりあがった次第。O先生、Y先生などに挨拶&おしゃべり、などなどである。
 午後は、パネル1 「「戦後補償裁判」が未来に果たす役割とは何か」。南典男さんの戦後補償裁判で認定された加害の事実についての説明。例の「西松強制連行事件最高裁判決」の読み方での大事な点の指摘は勉強になった。 『中国民衆の戦争記憶――日本軍の細菌戦による傷跡』の著者である聶莉莉(ニエ リリ)さんの「和解」の多義性の私的なはるほど。そしてパネル2「南京事件  発生の背景と沈黙の構造」である。これは吉田史学そのものの話って感じ。
 吉田さんの話は、[残虐行為の背景]=上海戦~南京攻略戦では、日本軍将兵(とくに兵士)は過酷な状況におかれており、(戦場という状況を勘案してもなお不必要に)人権を抑圧されていました。 このような軍事的合理性のない「日本軍による日本軍兵士への虐待」の実態を、その背景(補給の破綻、野営設備の不在、機械化の遅れなど)を含めて明らかにした。また、現地の日本軍上層部が残虐行為をある程度放任した事実も、当時の史料で示し、残虐行為の背景を多層的に、かつわかりやすくご解説。それにとどまらず、[戦後の戦争認識と加害体験]=近年の研究は、加害行為のトラウマが原因で戦争神経症を発症したと考えられるケースが日本軍将兵の中にも少なからずあったことを示唆していることをあげ、また戦中戦後を通じて、それら将兵が抱える罪責感に日本社会は注意を払ってこなかったため、加害体験の「カムアウト(公表)」を封じ込める力が働いてきたことを指摘。罪責感を参戦将兵個人にのみ負わせ、日本社会全体で共有せず、そのことが参戦将兵をいっそう苦しめてきた戦後史の問題を指摘したものでした。

20071216163611 2日目の午前中は、パネル3「東アジアにおける戦争の裁きの再検討」。中国でつくられた「人道的寛恕」という撫順の戦犯管理所についての映画を少し見た後、体験者の高橋哲郎さんの話。中帰連のとりくみについては、いろいろな議論や誤解があるけれど、そこでとりくまれた「改造」、罪と向き合った兵士たちの問題についての意味を考えさせられた。より刺激的だったのが、中国社会科学院の程凱さんの報告。私個人としては、これが今回のシンポジウムの中ではいちばん刺激を受けた。話の内容は、「現代思想」07年8月号に掲載されている「『2つの戦後』と改造事件」についてのもの。これは必見の価値あり。戦後の冷戦の成立とその終焉という国際的な枠組みのなかで、この「改造」がどうとりくまれ、その後、どのように語られていったのか。冷戦の終結というもとで、今後の展望や可能性を示唆する。
 お昼は、教育学者のUさんと食事&おしゃべり。ちゃんとこういうところに来るという点に頭が下がる。そして、午後はパネル4「ヨーロッパでは戦争責任をどう議論しているか」。ここは、疲れはててしまって。十分に頭が機能しなかった。ただ、ヨーロッパの弱点や模索などの視点は勉強になる。最後が、総括ディスカッション「東アジアの和解と平和にむけて」。笠原さんの話、尾山先生の話はいずれも、うなずけるもの。徐勝さんの話は、実ははじめて聞いたのだけれど、ダイナミックな話で、これも刺激的だった。荒井先生の話もあいかわらず知的な示唆に富んでいる。もう満腹状態で。閉会を迎えた。

 2日間をとおして、すごく考えさせられたことは、南京事件をはじめ、日本の戦争の実相とその背景をつかむことの大事さと同時に、そのここと向き合うことの意味を、戦後の歴史、とくに冷戦の成立と終結という流れのなかで、掴むことの大事さということだろうか。戦後の歴史認識や平和意識は、冷戦というものに大きな影響をうけていることは否定できない。だからこそ、現在、日本は、歴史と向き合う困難と同時に、条件や可能性がちがって意味で生じているということだと思う。ざっと感想を書いたけど、1つひとつ深めたい論点をたくさんもらった感じがする2日間でもあった。

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