格差社会の克服――さらば新自由主義
二宮厚美さんの『格差社会の克服――さらば新自由主義』を読んだ。正確にいうと、少し前に買っていて、前半だけ読んでいたんだけど、そのままにしていた。最近、例の、赤木問題の流れで、若者をとりまくイデオロギー問題を、勉強したくって、もう一度手をとった次第である。
内容は、
格差社会容認の格差社会論を斬る! 格差社会がつきつけるものは不自由<貧困>と不平等<格差>である 格差社会化の問題は、実は不自由の増大、したがって貧困の深刻化でもあるということである。 格差社会化は、近代社会の証である自由・平等の理念にたいして、それとは正反対の不自由(貧困)と不平等(格差)という二つの問題を私たちに同時につきつけている。第一章 格差社会を抉りだす視点と指針
第二章 現代日本の複合的・連動的な格差社会の構造
第三章 格差社会化の背景と格差容認のイデオロギー
第四章 羊頭狗肉のキャッチコピー「希望格差社会」論批判
第五章 現代日本の格差社会論の諸潮流
と、現在の格差社会の問題を、社会科学の視点からメスを入れることに挑んだもの。
中西新太郎のいう、「シニカル理性」(シニシズムが、斜めから社会を見つめながら批判的な視点をもっているのに対し、シニカル理性とは、現状をまるごと受け入れるのを拒否するようなシニカルな姿勢ながら結局現状を肯定する)というものの、具体的な表れを考えていくうえでも、後半の4章や5章が、とくに関心をもって読んだわけだけれど。
問題をたんに、格差という視点からだけではなく、階級的な視点でみるというのは、問題の複雑さを解明していく上ではたしかに目から鱗である。
ただ、応用問題として大事なのは、議論の仕方ということか。
4章や5章の論者たち、半ば新自由主義を容認する議論、とりわけ能力主義的な立場に立った議論というのは、それなりに社会的に受容される基盤がある。頭から否定するだけでは、なかなか説得できないだろう。新自由主義や、能力主義にとらわれないような、生き方があるということを対話のなかで、示していけるようなそんあ議論が必要なのだと思う。
同時に、そのうちの少なくない論者が、貧困に対してはきわめてきっぱりした批判的な視点をもっている。では、その一致点をどう大切にすべきなのか。その一致点には、どのような可能性や条件があるのか。そういう視点ももとめられよう。
最後に、もう1つ。それらの論者の指摘の中で、私たちの論議の、盲点や弱点を補う視点がないのかどうか。そんな自己点検もわれわれには求められているのではないか。
自分が、この間、学んできたことを整理する上で、有益な一冊でもあった。
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