« 普天間基地移設をめぐる不可解 | トップページ | 凹み、落ち込み… »

2007/10/29

教育再生の条件

02929922 学習指導要領の改訂を議論している、中教審初等中等教育部会の教育課程分科会の審議が山場を迎えている。その審議のなかでは、知識基盤社会という言葉が出てくる。OECDの教育改革で使われる言葉だ。これをどう理解したらいいのかといろいろ、調べ始める。一般的には、ポスト産業社会のイメージとして、知識社会と言われるが同じことと言ってもまずまちがいはなさそうでもある。
 ヨーロッパ、とくに北欧使われているようだが、アメリカのドラッカーあたりも70年代から使っている。同じ、次の社会を展望しての言葉つかいだが、どうも意味が違うようでもある。
 そんなこともあり、経済学者の神野直彦さんの『教育再生の条件』という本を読んでみた。

 危機に立つ日本の教育.それは,学校の危機,学校教育の危機にとどまるものではなく,日本の社会が,社会として社会の構成員を育成することに失敗しているという大きな危機の一部に過ぎない.この認識を欠くがゆえに,1980年代以来声高に「教育改革」が叫ばれながら,いずれのプランもうまくいかず,事態はますます深刻化してきたのだ.著者は,日本と同じような問題を抱えていたスウェーデンの事例を詳細に検討するとともに,そもそも教育は誰のために何のためにあるのかという理念を問い直すことを通して,個々人の人間的能力を高めることで,社会が力を取り戻し,教育の再生が可能となる道筋を分りやすく提示する.社会を総体として問い直すことなしに教育の再生はありえないとする著者の議論に接するとき,読者は,21世紀日本の「危機の核心」を理解することであろう.

 経済学者の手によるものだけに、読んだ印象は図式的であり、いわば生産力還元主義ともいえりような内容になっている。産業構造の変遷に教育という営みを直接に対応させすぎてきて、教育独自の営みももつ意味が浮き彫りにならない。
 ただ、スウェーデンを例に、知識社会を語るとき、その姿はとても魅力できてもある。「学びの協同」という姿は、より発見も多いし、そこに描かれた主体的な学習の姿が魅力的だ。その社会像を歴史的に探ろうとしたとき、学校という存在も歴史的な存在であることに気づかされる。もともと学校というものも、二面性をもっているのだろう。それだけに、教育という営みのよる試行錯誤や葛藤そのものが、産業の発展と連関しながらも独自に発展の道をたどっていることを捨象してしまっているのは、残念でもある。
 また、新自由主義の「教育改革」に対置するビジョンは魅力的だが、それは単に、政策的な選択の問題なのか?
 経済学者にこんな議論をされると、教育学者がちゃんと、こうしたテーマでの議論を期待したくなる。
 刺激的ではある一冊であった。

Banner_02人気blogランキングへ 励ましのクリックを

|

« 普天間基地移設をめぐる不可解 | トップページ | 凹み、落ち込み… »

コメント

東京の政策研究大学院の図書館にて読んだところ 筆者は経済学者で 経済学の観点から教育の意義を語っていたと認識しております。 マクロ経済学の経済の発展の要素の一つに教育があげられておりますので コメント下記させていただきます。
 Google Knolにて 21世紀の教育制度につき Californiaなどの例を紹介しております、ご参考まで。

教育が社会的共通資本である理由:
   マクロ経済学によると 経済の発展には教育と医療を行き届かせた上での人口増が必要とのこと。
すなわち、経済の発展の為には 国民に対して その時代の国の競争力に必要な教育を施し 付加価値、生産性、差別化のある仕事に従事させる必要がある。  グローバル化の中、 組み立て産業中心の経済から サービス・知識産業経済の時代になっており、 教育の内容も知財、Innovation, 差別化, Digital Content等 自らが優位性と儲かる仕組みを創出可能なProfessional 人材育成プログラムが必要である。
  教育を受けることが困難な状況な国民が存在するという事は、可処分所得、生産性、付加価値の面から、長期的に経済が停滞することにつながる為、 教育は無料で国民に提供されるべきものである。 
  教育が国の経済の発展につながり、その結果、国民全体の生活レベルが高くなることから、 教育は社会共通資本であるという認識が 世界の多くの国での教育の無償化につながっている。
  G20の現在、教育を通じた底上げに加えて、Globalに活躍する海外の人材と競争可能な人材を育てる必要がある。
Sum up: what affects economic growth

Capital K (accumulated assets in the society? or monetary investments into such ?)
Population growth L ( Labor )
Education level
Healthcare
Technological progress
Innovation
Learning by doing and knowledge spill overs:
technological externarities
Network externalities
Stable political and social institutions
 

投稿: BetterWorldPilot | 2009/11/12 00:33

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/59689/16914959

この記事へのトラックバック一覧です: 教育再生の条件:

« 普天間基地移設をめぐる不可解 | トップページ | 凹み、落ち込み… »