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2007/09/06

アジア・太平洋戦争

D0001004_916382 この間読んだ本のなかで、とても面白かったのが、岩波新書で吉田裕さんが書いている『アジア・太平洋戦争』です。
 この本でいうアジア・太平洋戦争は、シリーズ本の制約から、対英・米戦争の開戦、アジア諸国への戦争の時期に限っています。しかし、このわずか5年の期間の記述ですが、この間の歴史研究の成果に十分なめくばりがされていて、読み応えがありました。
 目次はと言えば

 はじめに
第一章 開戦への道
1 三国同盟から対英米開戦へ
 2 戦争の性格
 3 なぜ開戦を回避できなかったのか
第二章 初期作戦の成功と東条内閣
1 日本軍の軍事的勝利
 2 「東条独裁」の成立
第三章 戦局の転換
1 連合軍による反攻の開始
 2 兵力動員をめぐる諸矛盾
 3 「大東亜共栄圏」の現実
 4 国民生活の実状
第四章 総力戦の遂行と日本社会
1 マリアナ諸島の失陥と東条内閣
 2 戦時下の社会変容
第五章 敗戦
1 戦場と兵士
 2 本土空襲の本格化と国民
 3 戦争の終結へ
おわりに
あとがき

 ですが、開戦をいたる経過のなかでは、日本の戦争がいったいどんな名目でおこなわれた戦争だったのかということが示されます。軍事オタクと言っても決して失礼ではない(笑い)吉田さんならではの記述で、この戦争がどのようにすすめられたのか、そのあまりにも貧しい内実が明らかにされています。そして、その戦争が、もらたしたこと。「大東亜共栄圏」を掲げながら、アジアにどのような苦難をもたらしたのかは、その背景や要因も含めて、なるほどという説得力があります(アジアの経済関係を破壊したという問題など)。日本の兵士たちにもたらした問題も鮮やかです。
 総力戦の時代の日本は、戦後の日本の現代史を考えるうえでも、貴重な論点がたくさん紹介されています。
 兵士たちの死についての吉田さんの議論は、しっかりうけとめたいとも思いました。
 ぜひ、おすすめの一冊です。

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