神戸 いじめ自殺事件
この事件には、かなりダメージを受けている。心に深くつきささった棘のように、今日一日、私を支配し続けたような感じがする。もちろん、まだまだ事実は、定かでない部分が多い。しかし、たくさんの問題を投げかけてはいる。
自殺の生徒宅でサイト作成 神戸、実名や住所も掲載(中国新聞)神戸市の私立高校で自殺した三年の男子生徒(18)に同級生の少年(17)が金を要求し逮捕された恐喝未遂事件で、男子生徒の下半身の写真などが掲載されたインターネットサイトは、逮捕された少年を含むフットサル仲間が、男子生徒の自宅にあるパソコンで作っていたことが二十一日分かった。
また、サイトには男子生徒の実名や住所、メールアドレスも掲載されていたことが判明。男子生徒は七月二日にメールアドレスを変更し、翌日、飛び降り自殺した。
…学校関係者によると、発端となったサイトは約二年前、フットサル同好会の情報交換の場として開設。今春閉鎖されたが、フットサル仲間が再び作り直した。
その後、男子生徒の裸の下半身の写真や、強引に開脚させた姿を撮影した動画を載せるなど、次第に「いじめの場」に悪用されていった。同校の多くの生徒がこのサイトの存在を知っていた。
サイトは各メンバーの個人ページなどで構成。男子生徒のページは仲間が作っていたが、男子生徒自身が作成・更新したように偽装していた。兵庫県警少年捜査課もこのサイトの存在を把握。サイト上でのいじめや嫌がらせが、男子生徒を自殺に追い込む一因になったとみている。
たぶん高校生のいじめ自殺というのは、ここのところの新しい特徴でもある。そこには携帯やインターネットが常に介在し、いじめのツールとなっている。
この間、いじめの問題は、何本か企画で担当し、いろいろな角度から追求してきた。でも、まだ自分で理解しきれにでいることは少なくはない。
たとえば、今年の夏の教育研究の集会でもいじめの問題は、やや論争にもなっている。教育学者の折出健二さんは、自身のHPで、次のように問題を提起している。
わたしとしては、竹内氏に象徴される、いじめもまた子ども時代のつきあいかたであり、問題はそれが迫害に転化するのはなぜかを解明することだ、といういじめ観は80年代のものだと思います。いまや、90年代以降、新自由主義的な競争と孤立化、排除と不信が広がる中では、いじめは明らかに相手の拒否・否定・抑圧・攻撃という暴力性をおびて行為化されているのです。
…「いじめも子どもの付き合い方の一種。それしかつきあえない」というのは、一見もっともらしいのですが、結局は、それによって傷つくかどうかは、それを受け止める側の「感性の違い」になるおそれがあります。つまり、いじめの攻撃性、外傷体験の惹起が、どこか不問にされる、あるいはつきあい行動の中に解消されるおそれがあるのです。そういういじめ認識で今後も通用するのかどうか、子どもたちのメッセージはそれを果たして認めるものであるかどうか。
…一定の地歩を築いておられる教育学者の「いじめ観」の中に、どこか、いじめ・いじめられ関係を上から見下ろしているところはないか。結局は、いじめという「付き合い」を通して集団を知り他者を学ぶほかないのだ、といった家父長的な見方はないのかどうか。
ここを一端突き抜けないと、教育学者のいじめ論は、いじめの現場を生きている子どもたちにとっては無力だと思います。いやそれどころか、現にいじめで悩む子どもにとっては、教育学をやるひとでさえそのようなとらえ方か、と絶望感さえもつのではないでしょうか。
たしかに、明らかに、いま私たちの目の前にある”いじめ”は、きわめて攻撃性を帯びている。最近、TVドラマでも、たとえば菅野美穂が主演した「私たちの教科書」だとか、「ライフ」といったものがあったが、いずれも目を覆いたくなる激しい暴力の世界であった。ライフは、長男が高校のとき読んでいたマンガでもある。はたして彼はどのような暴力の世界に生きていたのだろうか、聞いてみたい気がする。
自殺に追い込むようなことは、絶対に許されない。いじめで打撃を被った子どもの傷を、曖昧にすることは決して許されない。しかし、だからといってそれを”犯罪”という言葉だけでかたずけることは何の解決の用意しない。暴力を暴力だと批判するだけでは解決はしない。暴力が支配力を持つ世界にわけいって、子どもとともに、そこから解き放たれるような道筋を、ともにもがき、探すことなのだろうか。
そんなことを考えながらふと、黒沼さんがいきていたら、いまならどんな仕事をしただろうと考える。私たちがやらなければならない仕事も小さくはないと、そう思う。(つづく)
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» いじめをなくす方法簡単です(いじめた人間の顔写真を全国に晒すことです) [JJ雑記]
相変わらず陰惨ないじめがはびこっているみたいですね。自殺した生徒の事を考えると本 [続きを読む]
お久しぶりです。いじめ・自殺や殺人に関して,たしかにわたし達の世紀と時代とは全く違う環境に育った子達ですから,子ども観を変えていかないといけないのかもしれませんね。わたしも,いろんな本に当たってみたいと思っていますが,なかなかすっきりしたものに出会いません。またおしえてくださいね。
投稿: KATEK | 2007/09/23 18:15
とにかくよく話を聞きたいものです。よく知りたいものです。そして、よく話たり、考えたりしたいものです。子ども観もそうですが、私たち自身が、自己認識もできていないように思えます。子どもたちにとっても、大人はそう簡単に信じることができない相手なのかもしれないし…。
投稿: YOU→KATEK | 2007/09/25 22:58
追伸、ほんとにご無沙汰しています。たまに、そちらにもコメントしようとは思うのですが、なかなかうまく思い浮かびません。がんばります(笑い)。
投稿: YOU→KATEK | 2007/09/25 23:00
こういった暗い話題がなくなり、未来ある子どもたちを育てていきたいと思います。小学校で教師をしているhokekyoです。また寄らせていただきます。
http://blog.livedoor.jp/hokekyo8/
投稿: hokekyo | 2007/09/28 23:30
こちらこそ、よろしくお願いします。
投稿: YOU→hokekyo | 2007/10/20 00:34