「もう一つの『東京裁判史観』」
今月号の『現代思想』は、東京裁判が特集のテーマ。第一人者の粟屋憲太郎さんのインタビューや内海愛子さん、小森陽一さん、成田龍一さんによる座談会など読みごたえのあるものになっている。
職場の友人との会話で、ちょっとした話題になり、高橋哲哉さんの「もう一つの『東京裁判史観』」という論文(インタビュー)を読んでみた。なかなか、おもしろい論文だ。つまり、天皇を免責し、かつての戦争の責任のすべてを軍部におしつけた史観が、「もう一つの『東京裁判史観』」として戦後の日本社会を支配しているという指摘である。論文の趣旨そのものは、なるほどとかなり同意をするものである。この間、東京裁判にかかわるような本を少し読んだりしても、この天皇の免責という問題は、日本の戦争責任との向きあい方をある意味決定づけたという性格を持つし、この点が、東京裁判の、他のさまざまな問題と比べても決定的に裁判を特徴づける点となっているとつくづく思う。
高橋さんの論文では、この「史観」を現在の靖国をめぐる問題や、憲法、沖縄をめぐる問題とむすびつける。日本の戦争への向きあい方が、現在の日本政治を特徴づける大きな骨格になっていることは否定しようがない。ただ、現在の政治を貫くナショナリズムの復権というもののなかで、「天皇」というものの位置づけはいたって微妙だ。つまり、「もう一つの『東京裁判史観』」なるものは、きわめて不貫徹の形で、現在の政治に影響を与えていると考えたほうがいいのではないかとも感じる。この「史観」と、現在の政治現象をつきさして論じるには、もう一つも、二つも中間項を用いた議論がなされる必要があるのだろうな、なっていう感想をもった。
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