総員玉砕せよ!
ゲゲゲの鬼太郎の作者、水木しげるさんは、南方での戦争体験をもつ。その記録でもある、この漫画がことしNHKでスペシャルとして放送される(8月12日)ということで、仕入れて読んでみた。
水木さんの体験は、すでに何冊かの本になっている。しょうけい館が出来たとき、特別展が開催されていて、それを見たことがある。この本は、ラバウルのさらに前線のバイエンに送られた兵士たちの物語。前半は、その過酷な日常生活。そして後半は、玉砕命令と、それに簡単に従うことができなかった兵士の物語だ。
南方の戦場の戦死者は、ほとんどが戦病死である。これは近代戦では、異常な事態でもある。その内実は、5割から6割が餓死、1割以上は水没死であることがわかっている。ここに一つの、日本の戦争の非人間性がある。そして、その結末が玉砕である。その後、特攻死につながる、この玉砕は、沖縄の集団自決にもつながる死の形である。いかに、日本の軍隊は、この異様で、意味のない死を強いたのか。主人公の、死の直前の「みんなこんな気持ちで死んでいったんだなあ/誰にみられることもなく誰に語ることもできず…ただわすれ去られるだけ…」という言葉、そこには、作者の「ぼくは戦記物をかくとわけのわからない怒りがこみ上げてきて仕方がない」という思いがまちがいなく込められている。
62年後の私たちは、この事実から、何を受けとめるのか。兵士の死は、いまここにもある。とても重く考えたい。
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