もうガマンできない! 広がる貧困
最近、貧困についてのすぐれた本が多数でている。本書も、その一冊だ。3月に「反貧困」を訴える集会が東京で開かれ、その当日の報告も交え、非正規労働者、シングルマザー、障害者、高齢者、多重債務者、在留外国人など、貧困にあえぐ当事者の声を収載したのが本書。湯浅誠、雨宮処凛等の論者が現状分析と解決への展望を語っている。
何よりも、貧困の実態を、当事者の発言で明らかにしている。貧困は不可視化されてるのが特徴だけに、こうした本の意味は大きい。私も知らなかった事実は、少なくないし、それだけに考えさせられることが多い。
何より、これまで壁のあった、各分野の人が、それぞれにお互いを知り合い、連帯の一歩を築いたのも大きい。
読んでいて、考えさせられたのがメディアからの報告。貧困の実態への接近と同時に、その構造への理解の問題。例の、ネットカフェ難民の番組への反響は、ある特定の少女を助けたいというものが多く、あたかも、崖の犬を助けたいというものと同じだあったという指摘。その後のメディアの貧困問題への接近の限界も指摘している。
貧困の発見のためには、こうした実態の暴露と、同時に、個々の事態をより構造的にとらえていく作業も必要だろう。それは、社会的な連帯の構築=自己責任の強固なイデオロギー的をうちやぶっていくためには必要だろう。
また、まだ見えていない事実も少なくない。たとえば、この本の中には、子どもに関わる貧困への言及はきわめてすくない。ここに、貧困の固定化、拡大再生産の構造あり、ある意味で不可視化される構造の鍵があるだけに、そうした分野での議論ももっとすすめなければならないと思う。
いずれにしろ、廉価で読みやすく、読む価値の多い1冊。
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