満州事変から日中全面戦争へ
最近は読んでいて、ほんとうに面白いなあという本が多い。そんな本を読んでいると、とにかく幸せである。この間、読んだ本のなかで、勉強になったのがこの『満州事変から日中全面戦争へ』という本。伊香俊哉さんの単著を読むのははじめてだったけど、なかなかの本である。
この本の特徴は、著者自身が「あとがき」のなかでまとめている。最近の歴史学の成果をふんだんにとりこんだだうえで、日中戦争が全面戦争化していく過程をていねいに描いている。とくに、加害の実相や、最近の歴史学の成果である戦場の兵士たちの実際も、良く描かれていると思う。日中戦争が拡大していく、政治、軍事戦略の過程もよく描かれている。内蒙や華北をめぐる日本政府の対応と矛盾もよく分かるようになっている。そして、何よりも、著者の十八番ともいうべき、戦争違法化や国際人道法の発展のなかで、この戦争を位置づけているところが特徴だ。日本が、こうした国際社会の変化を当時どう見ていたのかがよくわかる。決して、単純な視点しかなかったわけではないが、それが結局、もっとも対極の方向への傾斜していく過程がよくわかるのだ。
来月は、廬溝橋事件から70周年にあたる。日中戦争が全面戦争化して70年になる。そんな年に、こうした本を読んで、歴史をしっかりふり返ることは大切なことだと思う。お薦めの1冊です。
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