憲法をめぐる特集の感想
テレビでは、 4月29日のNHKスペシャル「日本国憲法 誕生」を見ました。GHQ内部、GHQと日本政府、そして国会での修正などが、それなり丁寧に描かれていて面白いものがありました。やはり、24条をめぐるやりとりのところを、シロタ・ベアテ・ゴードンさんの証言をふくめいちばんおもしろいところでしょうか。日本国憲法が、世界のさまざまな叡知を集めてつくられたことが理解できます。5月2日は、「憲法施行60年 特集憲法九条 平和への闘争 ~1950年代 改憲・護憲論~」です。短い時間のなかで50年代を描くわけですから、かなり大作りなものです。でも、この時代のたたかいが平和憲法をささえたのかはよくわかります。
5月7日は、クローズアップ現代「9条を語れ 憲法は今」です。まえの2つが歴史であるのにたいし、この番組はいまを追います。井上ひさしさんが子どもたちに伝える憲法、経済界の人たちが憲法をどう考えているかを改憲派の高坂氏と護憲派の品川さんの主張で考えます。そして、「希望は戦争」という若者との対話を雨宮処凛さんが。改憲派の中心にいた、小林節さんが、愛国心を憲法に書き込むべきではないと主張したことから、改憲派の集会によばれなくなり、排他的な取り組みはダメと、護憲派の伊藤真さんと、学生たちのまえで討論をくりひろがていることが紹介されてた。やはり、おもしろかったのは、雨宮さんの取り組みだろうか。
新聞はと言えば、地方紙が、東京、北海道、中国、信濃毎日などが連載で社説を掲げるなど、力がこもっていたのが強く印象にのこる。朝日が、5/3に21本の社説を掲げたのも特筆もの。そのなかで、9条を変えないということを朝日が久しぶりに宣言をしたことを注目される変化でもある。
読売と産経の改憲の主張は、突出しているが、毎日はもちろん(正直、護憲を主張しているとは読むことはできなかった)、朝日の社説もどうも弱々しい。東京でさえ、あぶないなあという印象をもってしまう。つまり、どういうことか。大手の新聞は、社説の主張に、日米同盟の重視が前提とされているからだ。この日米同盟が重視されるかぎり、現実の、日米がいったいとなった軍拡と作戦がすすむなかで、9条とは矛盾する。そこが解き明かされない。
9条の会などの国民のたたかいの広がりが、朝日や毎日の主張をかろうじて支えているという感じがする。同時、国民の意識も複雑な面はある。つまり、先日紹介した世論調査を見ても、9条1項は文句なく支持するというものになっている。9条2項を変えないと言うのも多数ではあるが、1項ほどの圧倒的多数ではない。同時に、自衛隊の存在は認めている。その自衛隊は、日本を守るものであり、直接、戦争にかかわらない形での国際的な支援をする自衛隊というものと理解していいのだと思う。ここでは、先と同じような9条との矛盾は、正直、存在することも事実。
9条1項の理念は圧倒的に共通したコンセンサスとも言える。だからこそ、この9条の1項を生かす、現実的かつ先進的な方向が2項にあるという議論や確信を広げることが大事なのだということが、世論調査からは見えてくるのだと思う。つまり、軍事力に頼らない外交こそが、平和を守る道であることへの確信である。
とりあえず朝日が9条を変えないと宣言した地点にたって、こうした議論をどう広げていくことが大切なのか。しっかり考えたいと思った、憲法をめぐる議論への感想である。
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