「過去の克服」と愛国心
大朝日の手による本だから、取材は幅広い。ドイツ・ポーランドの間のとりくみと現在の葛藤・緊張などの下りは、インタビューもふくめ十分読ませるし、日韓の間の強制連行・労働にかかわる遺骨収集の宗教者のとりくみなどは、興味深かったりもした。それだけに、本全体のできが、なぜこうも、薄っぺらいのかと正直がっかりしたというのが本音の感想だ。
そのあたりは、最後のまとめに、あらわれている。その教訓を3つに提言しているのだが、あまりにも傍観者というか…。これが直接、戦争責任の当事者とも言える大手メディアが、こうした大型連載をした結果の結論なんだろうかと疑わせる。1つは、歴史と向き合うと名を打ちながら最後まで歴史の事実を検証するという作業を回避したことだ、だから、責任の所在も、原因も、その後の自体の問題の所在もあまりにも不明確のまま。2つめは、たとえば教訓で、善悪二元論に陥らないと言っているが、戦争の加害と被害の問題にしても、単純に二元論の問題性を客観的に指摘するだけでは問題の本質が見えてこないと思う。問題は、この加害と被害がメダルの裏表の関係にあること。つまり、被害としての戦争のもとにあるのも加害にあるのも、あまりにも人間の命、尊厳、権利というものが軽視され、虫けらのように扱われたこと。それが戦後に正面から、どちらも問いかけられなかったことにこそある。3つめは、現在の、偏狭なナショナリズムの背後にあるものにはまったくといっていいほど迫らなかったこと。ここ数年強まる偏狭なナショナリズムは、歴史認識という点でも、きわめて特異な性格をもつ。それはたとえば、かつての林房雄などの大東亜戦争肯定論などと比較しても明らかだと思う。とくに自民党の若手に跋扈するこうした議論になぜ切り込まなかったのか? 読後感は、あまりよくない一冊でもあった。
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