ガイサンシーとその姉妹たち(本)
以前に、映画の紹介をした「ガイサンシーとその姉妹たち」の原作本を、少しの中断を挟んで、読了した。すごい本である。
日本軍の性の奴隷として、深刻な被害を被った女性たち。その真実をさぐる10年に及ぶ旅の記録である。本そのものは事実を、たんねんに追う。ガイサンシーというのは、どういう人である、どういう状況下で、何が起こったか。その背景の、日中戦争の様相も丹念に追う。満州事件から、満州国の建設は、日本軍の華北制圧を求める。華北の安定のためには、と戦争は、中国全土に広がるが、上海から南京へ、やがて、中国軍からの徹底した反撃に直面する。華北では、八路軍による抗日戦争が広がる。そんななかでの事件である。
点による、泥沼化した支配は、現在のどこかの戦争を想起させる。日本の多くの兵士に精神障害が生じたのもこのころなのだろう。孤立化した軍隊の行ったことは…。中国の被害も、私たちの想像を超えるようなものだったことが、坦々とした、この本の記述からでも痛いほどわかる。
とくに山西省のたたかいが、激烈であったことは、この本のみならず、その後の「蟻の兵隊」などの事実からもよくわかる。性奴隷の被害は、戦後の被害、そして、二次被害までもを引き起こす。なぜ、そのことに、戦後の日本は向き合えなかったのか。この本が問いかける視点は、思い。同時に、加害に加わった兵士の取材もすすめる。ここにこそ、加害と被害の二分法ををのりこえようという著者の思いも伝わってくる。
こんな本を読むと、いまさらながら、ちゃんと事実に向き合わなければと、つくづく思わされる。へこたれてはいけない。私はたたかわなければならないのだと。映画もよかったが、この本は、圧倒的に人にすすめたい一冊である。
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