暴力の街
いろいろな意味で、日本の歴史に残る映画である。軍艦以外はなんでもきたといわれる、東宝争議をうけ、良心的な映画人(俳優もスタッフも)が参加して作られた映画。テーマも、埼玉、本庄での実話をもとに、朝日の奮闘を描く。映画としても、日本にはあまりない群像映画である。とりたてて、主人公がいるわけではない。街の民主化にとりくんだ、ジャーナリストと町民が主人公なのだ。こうした映画を演出が散漫だという人もいるが、山本薩夫は、個性的で力量をもった役者を、巧みに配置して、群像づくりに成功しているように思う。登場人物は生きている。
朝日新聞浦和局のキャンペーン記事「ペン偽らず」をもとに、山本薩夫監督が実在の事件をドキュメンタリータッチで描いた作品。暴力団や警察の癒着を描く。東宝争議後に技術者、俳優が枠をこえて製作に協力、独立プロの発足につながった。
メディアの今の課題を考える上でも、興味深い。朝日もふくめ、いまの大手メディアは、住民=読者と、こうした距離を築いているだろうか? もちろん、この時代と違い、住民の意識も多様で、敵も見えづらい。にしても、まだ、社会が、民主主義の面でも成熟過程にあった時代に果たした役割をメディアは果たせないのはなぜか。これは、政治運動も同じであろう。住民の意識が多様化し(消費者化し?)た、ある意味で成熟した時代なりの役割、ありようがある。そのことに、あまりにも鈍感になったのはなぜか。そんなことも、問いかける映画でもある。
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