教育3法案 何が問題か(1)
安倍内閣が、今国会の最重要法案として位置づける教育三法案の審議が、重要な局面を迎えています。このブログでお、この法案の問題を考えたいと思います。
昨年一二月教育基本法が、憲法の保障する思想・良心の自由、教育の自主性・自律性をふみにじり、憲法との一体性を断ち切る形で改悪されました。教育三法案は、この改悪教育基本法を具体化する位置づけにあり、今回提出された法案も同様の問題をもっていると指摘することができます。
教育三法案とは、学校教育法、地方教育行政法、教育職員免許法の各改定案です。このうち、学校教育法は、憲法の公布を受け、一九四七年に旧教育基本法と同時に公布された、戦後教育改革を方向づけた法律の一つです。学校制度の法定主義を具体化する法として、学校の設置・認可、管理と経費負担、教職員の種類と職務、各学校段階の教育目標・修業年限、児童・生徒の学校教育措置・懲戒を含む処遇など学校制度の骨格を決めている法律です。また教育職員免許法も、重要な戦後教育改革立法の一つとして四九年に公布されましたものです。これに対し、地方教育行政法は、一九五六年に、戦後改革立法の一つである教育委員会法を廃止し、それまで公選だった教育委員会を任命制とし、教育委員会の権限を弱め、文部大臣・都道府県教委・市町村教委の間に上下関係をもつこむものに改悪された経緯を持っています。この改悪が、その後の地方教育委員会のあり方に深刻な問題をもちこんだわけですが、それでも、戦後教育改革のなかでつくりあげられた独立した教育委員会の制度をある程度は維持するという面ももっていました。
今回の三法案は、こうした戦後、憲法のもとでつくりあげられた、教育制度の大きく改変する重大な内容を含んでいます。それだけに、子どもの日々の教育に深刻な影響をもたらすものとなっており、拙速な成立を許すことは決してできません。
教育三法案による法「改正」は、複雑で多岐にわたりますが、とりわけ学校と子どもたち、教員にどのような影響をあたえるのかかについて見ていきたいと思います。
法案の内容に入るまえに、三法案提出の経緯についてふれておきます。安倍内閣は、昨年秋、首相直属の「教育再生会議」を発足させ、教育研究者と教育現場関係者を排除したまま、密室の協議で安倍総理のかかげる「改革」を国民と子どもたちにおしつけようとしています。この教育再生会議が一月二四日に公表した第一次報告「社会総がかりで教育再生を~公教育再生への第一歩~」が、今回の教育三法案の原型というべき内容になっています。そのうえで、この教育三法案を中央教育審議会でわずか一カ月の審議で答申を出させ(二月六日に諮問、三月一〇日に答申「教育基本法の改正を受けて緊急に必要とされる教育制度の改正について」を提出)、法案化しました。教育現場にはどのような影響を及ぼすのかなどについての検証や、教育関係者からの意見聴取なども不十分で、いわば、アリバイづくりとしか言いようがありません。しかも衆院で特別委員会を設置してまでゴリ押しをはかる――本来、教育の基本原理にかかわるものだけに、慎重で専門的な議論が必要にもかかわらず、短期間で集中的に審議し成立させようという経過は、安倍内閣の強権的な政治のあらわれというほかないと思うのです。(つづく)
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