大学でいまおこっていること
昨日の読売新聞(WEB)が、次のような記事を掲載している。
「大学改革」目玉に…教育再生会議が予算配分など議論(読売新聞)
政府の教育再生会議(野依良治座長)は5月にまとめる第2次報告に向け、大学・大学院改革の議論を進めている。
志願者数と入学者数が一致する「全入時代」を迎え、学力低下など大学が抱える様々な問題への処方せんを示し、第2次報告の目玉としたい考えだ。
3月13日の再生会議第3分科会で中嶋嶺雄副主査(国際教養大学長)は「経営の苦しい多くの私立大学が入学金や授業料で補おうとして、安易に定員を増やす悪循環に陥っている。中国から半ば労働力のように学生をかき集める大学もある。本当の教育の場ではない大学が多すぎる」と大学の実情を嘆いた。
他の委員からも、大学の地盤沈下や極端な学力低下など、現状を憂う声が相次いだ。
このテーマは、3月20日におこなわれた第三分科会でも引き続き議論されている。
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/3bunka/dai7/7gijisidai.html
どうも5月の第二次報告の、第三分科会からの提案は、大学改革が中心になりそうな気配だ
一方、経済財政諮問会議でも、この大学の問題は議論されている。。「成長力強化のための大学・大学院改革について」と題した、例の民間議員の提案では、
成長力を強化するには、大学・大学院の改革が極めて重要である。世界中の大学がダイナミックに連携・再編に取り組むなかで、日本の大学は世界の潮流から大きく遅れている。“大講座制”“受験競争”“学閥”等に象徴される大学の戦後レジームを今こそ根絶させ、国際競争力の高い知の拠点づくりを行わねばならない。
ここでは、「研究資金獲得における競争原則を確立させるため、競争的資金(一律ではなく評価に基づく配分)の割合を大幅に高める」「国際化や教育実績等についての大学の努力と成果に応じた配分ルール・基準とする」というように、基礎的な研究経費の給付から、競争的に資金を配分することが打ち出されている。
学力テストと学校教育法改悪によってもたらされる「評価」と「競争」は、大学段階では、いっそう露骨・野蛮にすすめられようとしている。これで、日本の学術・研究は大丈夫なのだろうか。
最近、大学問題で、大きな話題になっている問題に、若手研究者の問題がある。ポスドク問題、非常勤問題といわれる。80年代以降の大学改革で、大学院の拡充がはかられたものの、若手の研究者の職は、むしろ激減している。たとえば、大学で見ても。助手職など、私の大学時代は、研究室に、教授が1人、助教授が1人、そして助手が1人は記憶があるが、現在は、教授・助教授10人ほどに、せいぜい2人の助手がいる程度にすぎない。しかも、年金の制度改悪に、国公立大学の多くは退官年齢が対応していないなかで、退官した教員が、非常勤として働くケースが生み出されそうで、これまで、非常勤の掛け持ちで食いつないでいた若手の職が奪われるという事態になりそうだ。こうしたなかで、有名大学の大学院のドクター課程の入試で定員割れがおこるというショッキングな事態まで生まれている。
先の経済財政諮問会議の「若手が自立して研究できるなど若者に魅力ある研究環境を整備する」などと言っているが、いずれにしろ、大学に財政的な支援がおこなわれる気配はまったくない。
大学でいま、ざまざまなことがおこっている。日本の学術の未来のみならず、日本社会の全体の未来にとって、よく考えたい問題でもある。
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