出口のない海――特攻を描くことのむずかしさ
佐々部清監督の映画は、特攻「回天」の乗組員の青春を描く。あまりにも非人間的な、強いられた死によりそうこの作品は、強く、この歴史をくり返してはいけないということを語りかける。その意味では、「男たちの大和」とも、ましてや「俺は、君のためにこそ死ににいく」などの映画とちがい、単純に、この「特攻」を美化しない、感動的な作品には仕上がっているとは思う。こうした若ものたちの青春を奪ったものに対して、強い怒りを覚える。
が、しかし、それでも。映画での「特攻」の描き方は、これでいいのか? という疑問を感じたのも事実。そこでは、この死を強いた真の原因は、明らかにされない。なぜ、だれが「特攻」というものを強いたのか! それは、あの戦争で、たくさんの被害をアジアや太平洋の地域で強いたものと重なっていく…。
この作品は、いい作品だということを認めた上で、考えたい。ただ、「特攻」で、強いられた「死」が美しかったと語るにとどまることになってはしまいか。どれだけ、「男たちの大和」や「俺は、君のためにこそ死ににいく」と、ちがうのか。そう問うことも、不可能ではない。
戦争を描くこと、語り伝えることのむずかしさをあらためて感じてしまう。
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