搾取される若者たち
さてお約束の「搾取される若者たち バイク便ライダーは見た!」の紹介です。内容の紹介についてはくわしくは、ここを見ていただくとして、私は、少しちがった角度から、論評してみたいと思います。松竹さんが「たとえば、ライダーたちの過酷さは『経営者がしかけたトリックなどではない』、ライダー自身が生みだしているのだという主張。だから『犯人は職場だ』という結論。『職場』が悪いなら、いったいどうしたら問題が解決するのは、先が見えなくなる」と、指摘している点を、どう考えるか、という点です。この点についてが、本田由紀さんは、先に紹介した『世界』の論文で、社会学者の矜持から、こういう指摘を避けたと言っています。そのうえで、企業の意図を指摘しています。
もちろん、松竹さんの指摘には私も基本的には同感ですが、私はあえて、この本の著者が、「職場の問題」とした提起をどう引き受けるのかということを考えたいと思っています。著者自身が、「搾取される若者」と表現しているし、この問題は「労働問題」だと言っているように、単純に若者の責任にしているわけではないし、現実の問題としては、企業の責任を不問にしているとも思われません。ただ、職場で見える事態として、自己運動的なメカニズムが働いているということに注目しているのだと思います。
本の事態も、メカニズムを分析した後の、対策や社会とのかかわりの言及は、かなり大ざっぱであいまいということもあるので、私の感想も、大ざっぱであいないなんだけれど、私が感じるのは、職場ですすんだ新自由主義的な「改革」というのは、職場の問題を、きわめて個別的・個人的なものに解体するという性格があること、そうしたことを促進する、個々の企業の意図を超えたような(に見える)、規制緩和を中心とした新自由主義「改革」による、イデオロギー的な攻撃も含めた、労働者への攻撃の特徴を見る必要があるという問題です。
この種の問題は、私には、あまり蓄積のない分野もでもあるので、うまく言えないけど、職場や地域での連帯を再生していく際に、大事な観点ではないかと、漠然と思っています。私の関心をもつ、いわゆる「感情労働」と言われる分野の問題を考えさいにも、その「誇り」や「生きがい」に依拠して問題を考えていくしかありません。そのとき、たとえば、教員の問題でも、ただ狭い管理職や教育委員会の教員に対する管理という問題だけではなく、もう一度、職場=学校・地域・家庭というレベルで(もちろん社会全体も)、労働のあり方を考えないと答えはでてこないような気もします。
やや混乱した感想で申し訳ないのですが、この本の著者があえて「職場の問題」とした問題意識を、引き受けて、こうした新しい特徴をもった、職場支配の問題について考える糸口を見つけないとも考えたりした一冊です。
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