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2007/01/31

氷の判決 中国「残留孤児」関東訴訟の不当判決

 中国「残留孤児」国家賠償関東訴訟について,東京地方裁判所民事第28部は,30日、原告らの請求を全面的に棄却する判決を言い渡した。判決は,「早期帰国実現義務」,「自立支援義務」そのものを認めず,全面的に請求を棄却する極めて不当なもの。昨日、ニュースを聞いて、あまりにもの判決に耳を疑った。「原告ら中国「残留孤児」の被害の実態から目を背け,日本人としての,人間としての尊厳の回復を求める原告らの思いを退けた」。いったい、日本の司法制度はどうなってしまったのだろうか。誰かが「氷の判決」と言っていたがまったくそのとおりだと思う。

 安倍首相は、国としての中国「残留孤児」に対する「きめ細かな支援」を表明したものの、実際には、そのスピードも、内容もきわめてあいまいで、求められているものではない。何よりも、そこには、棄民に対する謝罪はない。
 今日、ある歴史研究者の方と話をしていたとき、日本の戦後補償の裁判で壁になっている1つに受忍論があるが、この受忍論というのは、戦時中、日本軍が当時の国際法をふみじにった戦争の進め方をしたことの裏返しといっていた。国家としての日本は、この戦争を正面から反省していないのだ。

 なお弁護団の声明と、判決の要旨は、Continue readingで

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2007年1月30日

中国「残留孤児」国家賠償関東訴訟の判決について
     中国「残留孤児」国家賠償関東訴訟・原告団
     団 長  池 田 澄 江
     中国「残留孤児」国家賠償関東訴訟・弁護団
     団 長  鈴 木 經 夫
 本日,中国「残留孤児」国家賠償関東訴訟について,東京地方裁判所民事第28部は,原告らの請求を全面的に棄却する判決を言い渡した。
 本判決は,「早期帰国実現義務」,「自立支援義務」そのものを認めず,全面的に請求を棄却する極めて不当なものである。
 原告らは,幼くして満州の地に取り残されて以来,現在に至るまで,約60年間の長きにわたって,国の誤った孤児政策によって,「日本人として,日本の地で,人間らしく生きる権利」という,日本人であれば当然に有すべき権利の侵害を受け続けてきた。
 本件訴訟は,このような原告らが,国の政策の過ちを問い,日本人としての,そして人間としての尊厳の回復を求めるとともに,国策によって子や孫を再び残留孤児にするようなことがあってはならないとの願いを込めた裁判であった。さらには,私たち国民一人ひとりが,戦後一貫して日本人として当然の権利から排除,隔離されてきた日本国民がいるという現実を直視し,戦後日本の民主主義の質を問い直す契機となるべき,現代的意義をも有する裁判であった。
 ところが,本判決は,原告ら中国「残留孤児」の被害の実態から目を背け,日本人としての,人間としての尊厳の回復を求める原告らの思いを退けた。
 原告ら中国「残留孤児」は,これまで幾度となく祖国日本に見捨てられ,国会請願により国権の最高機関の良識ある対応を求めたが受け容れられなかったため,戦後約60年が経過してようやく「人権擁護の最後の砦」である司法に一縷の望みを託し,その救済を求めたのである。原告ら中国「残留孤児」にとって,司法が,日本人としての,そして人間としての尊厳の回復を求めることのできる,唯一最後の望みであった。
 しかしながら,本日言い渡された本判決は,このような原告ら中国「残留孤児」の思いを一顧だにしない,極めて非情で冷酷な判決であった。
 「人権の最後の砦」となるべき司法が,このような判決を下すことは,その職責を放棄したと言わざるを得ず,我々,原告団および弁護団は,この判決に対して強く抗議するものである。また,同時に,本判決に対しては,直ちに東京高等裁判所に控訴し,全国14の裁判所で闘っている原告(総勢約2200名)らと共に,闘い続けることを表明する。
 本判決は,国の責任を認めなかったが,昨年12月には,神戸地方裁判所が,国の「帰国制限」施策の違法および「自立支援義務」違反を厳しく断罪する判決を言い渡している。また,昨年2月に東京地裁で言い渡された先行訴訟判決(野山判決)においても,国の自立支援策が極めて不充分であったと厳しく指摘しており,国はこうした判断を真摯に受止めるべきである。
 現在,全国の中国「残留孤児」らの8割を超える者が提訴し,深刻かつ悲惨な生活実態を訴え,かつ高齢化する中で早期の解決を求めている。そして,中国「残留孤児」らを救済するために新たな支援策を作るべきであるという声が大きな世論となっている。
 我々,原告団および弁護団は,国に対し,中国「残留孤児」らが悲惨な生活実態に置かれていることを直視し,中国「残留孤児」らに対する施策を抜本的に転換し,全国原告団連絡会が要求する全面解決要求事項について,原告団および弁護団と早急に協議を開始し,中国「残留孤児」問題の全面解決を図るよう強く要求する。
 また,同時に,我々,原告団および弁護団は,中国「残留孤児」問題の全面的解決の実現まで,全力で戦うことをここに宣言する。

最後に,この訴訟に対し,署名・傍聴活動等により絶大なるご支援をいただいた全国の支援者ならびに他地裁の原告団・弁護団の方々,そして原告らを勇気付ける温かい取材と報道に取り組まれたマスコミ各位に対し,心よりお礼を申し上げるとともに,今後も,全面解決に向けてのますますのご協力とご支援をお願いするものである。
                                                 以 上

※※※※※※※※※
声      明
中国「残留孤児」全員に人間の尊厳の回復を!

                2007年1月30日
     中国「残留孤児」国家賠償訴訟原告団全国連絡会
     中国「残留孤児」国家賠償訴訟弁護団全国連絡会
 私たちは、2002年12月から今日まで、全国15地裁へ中国「残留孤児」2210名を原告とする国家賠償訴訟を提起し、法廷内外で闘ってきました。その目的は、裁判によって戦後60年に及ぶ「残留孤児」の筆舌に尽くしがたい深刻な被害をもたらした国の誤った「孤児」政策の違法性を明らかにすることによって、全国の「残留孤児」が願ってやまない「普通の日本人として、人間らしく生きる権利」を実現するにふさわしい政策を確立することが出来ると考えてのことです。
 昨年12月1日、私たちは、神戸地裁において待望の勝利判決を得ることが出来ました。神戸地裁判決は、帰国「孤児」の6割以上を生活保護の下で苦悩させている冷酷な国の「孤児」政策に対する厳しい国民的批判を引き起こしました。さらに、大半の「孤児」を生活保護から解放し、老後を人らしく生きることが可能となる「新たな給付金制度」の創設に対する国民的な理解と支持を強めるに至りました。また、「孤児」の悲劇を創り出した無慈悲な国の政策を厳しく指弾したとこれを支持する世論の高まりは、判決は、国会議員の中から政治の責任において中国「残留孤児」問題を解決しようとする動きを一段と加速させつつあります。
 これに対し、政府は、判決直後安倍首相が、国としての中国「残留孤児」に対する「きめ細かな支援」を表明したものの、従来の誤った政策を若干手直すためにわずかの予算を増額しただけで決着つけるという非情な構えをとっています。
 本日の判決は、原告40名を対象としているものの、全国の「孤児」原告の約半数となる1092名に及ぶ原告の訴訟を担う東京地裁の最初の判決です。それだけに、本日の判決を前にして近時国民世論の強い関心を改めて呼び起こすとともに、この判決が政府と国会が中国「残留孤児」問題を全面解決する契機となることへの国民的期待が高まりつつありました。
 このような状況の下で,本日,東京地裁は,国民の期待に反して極めて不当な判決を言い渡しました。同地裁判決は,事実を著しく歪曲し,国民の支持さえ得ることのできないものであって,神戸地裁判決の価値はいささかも揺るがないものと確信します。
 私たちは、政府に対し、次の通り要求します。
 ― 神戸地裁判決を真摯に受けとめ、これ以上裁判を争うことなく、中国「残留孤児」に対し謝罪するとともに、全ての中国「残留孤児」が日本人として人間らしく生きることが可能となる新たな給付金制度の創設を決断すること。
― 厚生労働省は、中国「残留孤児」原告団との定期協議の場を設け、中国「残留孤児」問題を全面的に解決するため、誠実に努力すること。
 最後に、私たちは、あらためて国民の皆さんに訴えます。
― 神戸地裁判決が認定した中国「残留孤児」発生と戦後60年に及ぶ苦難の歴史の真実について認識をより一層深めていただき、国がこれ以上不当に裁判を争うことを止め、速やかにこれまでの誤った政策を抜本的に転換をするよう政府へ働きかけてください。
― 中国「残留孤児」の人間回復を求める国民署名へ100万人を超える人々が署名してくれたことに示されるこれまでの私たちへのご支援に心から感謝するとともに、今後も私たちの「全面解決要求」を実現する闘いに対し引き続きご支援を下さるようお願いいたします。
                                                      以  上

以下は判決要旨

【早期帰国実現義務】
 原告らが主張する憲法、国際法・条約、法令は早期帰国実現義務を認める根拠にはならない。
 次に先行行為に基づく条理上の作為義務として、早期帰国実現義務が成り立つか検討する。
 満州国の建国や国策としての移民政策など国の戦前の政策が、原告らが孤児となった先行行為とは直ちに認められず、法的な賠償義務の発生根拠となる事実としての因果関係があると断定することはちゅうちょされる。
 また国の実質的な植民地政策や戦争政策は高度の政治的判断に基づくもので、本来司法審査の対象とはならないと考えられ、それを国の作為義務発生の先行行為として取り上げ、孤児となったこととの因果関係の有無について法的判断を加えることが相当なのか疑問の念を禁じ得ない。
 原告主張の損害発生の回避には、帰国させることしかなかったが、日中国交回復前に国として立案・実行することは現実的には不可能だった。国交回復後の回避可能性は、損害本体の発生を防ぐというより、さらに派生的に生じる損害発生を防ぐ可能性と考えられる。
 検討してきたことを総合的に考慮すると、原告らが主張する先行行為に基づく条理上の義務としての早期帰国実現義務が成立するとはいえない。
 原告らは、歴史的には国の政策で孤児となったという見方も成り立つのは明らかで、探索して早期に帰国を実現する方策を取る義務を負担していたという原告らの主張を肯定することも全く考えられないことではない。
 しかし戦前の国家政策を現行憲法の国家観・価値観で評価し、法的判断をすることは差し控えるべきだ。旧憲法下では国家無答責の理論が確立していたことや原告らの被害はいわゆる戦争被害の範ちゅうに含まれるとみる余地があることを考慮すると、明確な法律上の根拠がないのに条理を理由とした早期帰国実現義務を認めるのは法的判断の枠を超え、不相当だ。
 以上から国が早期帰国を実現する法的義務を負うとは認められない。

 【帰国遅延の違法性】
 国は世論や国内の親族、中国政府の意向を考慮しながら、孤児とその家族の帰国希望にできる限り沿い、帰国後の日本社会への円滑な適応のために順次制度を整備し、現実に自立支援が可能な限度を考慮しながら必要な措置を講じていると評価できる。
 国以外に帰国者に対する基本的な自立支援措置を継続的に提供するものがない状況では、仮に一定の入国条件の設定も行わないで、現実に国によって何の支援措置も取ることができない状況において、日本語も全くできず、日本の文化や生活習慣にも慣れない帰国者とその家族が一挙に入国することになれば、かえって日本社会に円滑に定着することが困難になり、国内で混乱と厳しい批判の生じる恐れもあった。
 急激、大量な帰国者の受け入れと、それに必要な財政的措置を取る政策を他の政策に優先して取ることが、当時の世論の支持を得られたかは疑問で、現実に行われた入国審査や帰国支援策が行政の裁量の範囲を著しく逸脱した違法または著しく不当な政策であると断定することは困難だ。
 なお日本政府による帰国妨害があったという主張を認める証拠はない。

 【自立支援義務】
 国が原告らに法的な自立支援義務を負っていると認めることはできない。憲法、国際法・条約、法令、先行行為に基づく条理上の作為義務は、いずれも法的な自立支援義務の根拠とはならない。
 先行行為に基づく条理上の作為義務としての自立支援義務については、成立すると認めることはできない。早期帰国実現義務が認められないとすると、原告らの帰国時に日本語能力を失っていることと高齢になっていることについて国が責任を負う理由がなくなり、国のどのような行為を先行行為ととらえるのか明らかでなくなる。
 日中国交回復後の中国政府との外交交渉については、政治的判断として司法審査の対象となるのか疑問であり、入国審査についても行政裁量が認められていて裁量権の逸脱とすべきものは見当たらない。
 国が現実に立案して実施した帰国者およびその家族に対するさまざまな自立支援策については、原告らに多くの不満があることは理解できる。しかし、国は原告らに対し法的には自立支援義務を負っておらず、これらの政策は人道上必要かつ実行可能なものとして行われたと考えられる。
 原告らが生活保護の支給を受けられることを考慮すると、これらの施策の立案・実行が著しく合理性を欠き、原告らに看過できないほどの損害が生じているとまでは認められず、国の自立支援に関する施策を違法または著しく不当と評価することはできない。

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