安倍政権論
年末に発売されている『ポリティーク12』に渡辺治さんが、「安倍政権論――『戦後体制』の打破をめざす政権」という論文をのせている。安倍政権に課せられた課題を、小泉政権の到達点と限界をふまえ、明らかにしている。それが1つが、軍事大国の完成と改憲に、もう1つが構造改革の推進と破綻した社会統合の弥縫にあること、その特徴にある安倍氏の政治思想を概観し、安倍政権の担い手と支持基盤、政権の矛盾を明らかにしている。
いろいろお世話になっている先生だけど、この人の生産量には頭が下がる。そして、自らのことを省みないほどの、社会変革の運動への知的貢献という点でも。先生の論点には、個人的には異論もあるけど、豊富な知識に支えられた議論、そして鋭い着眼点は、学ぶところは多い。
今度の、論文も、”なるほど”と学ぶところも多く、個人的にも、頭がずいぶん整理された思い。90年代以降の改憲過程の整理は、これまでのものをふまえたものだけれど、その2つの課題を安倍氏にたくすにいたった、安倍氏に自身の政治思想の特徴の指摘は、言われてみればあたりまえでもあるんだけど、なるほどと納得がいく。安倍氏のナショナリズムの、中曽根氏などにくらべてのあまりにもの薄っぺらさ。そうであるがゆえに新自由主義とむすびつく。そして、氏のかかげる新保守主義と新自由主義という相容れない思想潮流の、(支持基盤としても)奇妙な同居。それであるがゆえに、きわめて脆弱な政権基盤…。しかし、それは、自民党政治、保守政治自身のゆきづまりの、歪んだ反映でもあるのだと思う(靖国問題などの小泉政権とはちがう形での)。そうであるがゆえに、改憲への動機は強まるのかもしれない。なお、『現代思想』の1月号で先生は「戦後保守政治の中の安倍政権 『軍事大国』派の系譜」という論文をよせている。戦後史のなかで、今度の安倍政権論を位置づけたような論文で、ポリティークの論文の姉妹編ともなっている。
永田町では、あいつぐスキャンダル。一方で、ホワイトエクゼンプションの導入先送り?の報道に見られるような、党の官邸に対する巻き返し? 政治の世界では、これから選挙に向けて、さまざまに揺れながら、いろんなことがおこりそうだ。そういったことを繕いながら、脆弱な基盤のうえに、いろいろな舵取りがされるのだろう。
憲法をふくめ、力づよい国のあり方の転換の声こそが、求められているのだと思った。
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