岸 信介
私は、お風呂でも本を読む。この本は、ずっとお風呂のなかで読んだ本。でも、私のお風呂は烏の行水のようなものなので、一日数ページしかすすまない。読み終えるのに、結局3カ月ほどかかったのだろうか。もっと、すっかりお風呂にはいったほうがいいんだろうが。
さて、この本を読んで思ったこと。1つは、この人物のあまりにも深い、侵略戦争への関与だ。満州での役割は、何冊か本を読んだことがあったけど、トータルに、戦前の支配のなかで、彼の果たした役割の大きさには、あらためて驚く。と、同時に、なぜ、このような経歴の人物が、戦後政治に生き残ったのかという問題でもある。日本政治の戦犯性の奥深さをまざまざと感じさせる。
その彼の、戦後の振る舞いの変化にも驚かされる。アメリカへの追随のなかで、どういう政治スタンスをつくりあげてきたのか。戦前との関係で、彼の天皇観というのも興味深いのだが、強い国家主義者であることが、一つのポイントであると思う。天皇観や歴史観よりも、国家主義であることに重きをおく姿は、何となく安倍晋三とも重なるのではないだろうか。
この本を読んでいて、日本の戦後史というのは、常に安定的に、為政者が、支配していたのではなく、何回もの、支配者にとっての危機を向かえていたというのもよく分かる。アメリカの対日支配といえども、歴史の局面として、大きな危機に直面していると彼らが感じた場面はあったのだと。
結局、日本が民主主義の国家であろうとすれば、岸のような政治家は、決定的に国民との矛盾をもつ。それは、現在、安倍晋三が、異常なほど、国民正論を意識した政治をおこなっていることにも通じる問題でもある。日本政治の異常が、岸の姿からは垣間見えるが、同時に、その脆弱さも見えてくるように思えた。
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