アメリカのいまを知る2冊の本
科学者会議の研究集会の報告を聞いていて、印象に残ったのが次の2冊の本です。現在のアメリカを描いたルポルタージュです。私も、買って、パラパラとは読んでいたのですが。
1冊は、『ニッケル・アンド・ダイムド』。サブタイトルに、”アメリカ下流社会の現実”とあります、生物学の博士号をもつ、エッセイストの著者が、アメリカの下流社会の生活――レストランのウェイトレス、家庭清掃業者の掃除婦、それにウォルマートの店員として働き、その給料だけでまったく見知らぬ都市でアパートかモーテルかトレーラーハウスかを借りて自活を体験するという話。ワーキングプアと呼ばれる、働いても、貧困から逃れられない生活の実態をリアルに描くともに、それがただ、経済的な困難というだけではなく、非常に抑圧的な状況におかれ、精神的においこまれるさまを、生物学者らしく科学的な目線で報告されている。
もう1冊は、『報道が教えてくれないアメリカ弱者革命―なぜあの国にまだ希望があるのか』。堤未果さんという若いジャーナリストの著作。ことしのJCJの新人賞を受けている。目次をたどれば、大統領選の光と闇(ハンスト実行;アロハシャツのガンジー ほか)/正義の価値(なんでハンストしようと思ったの?;新聞のない家;こんなことする価値、あるのかな;号泣する市民たち;ほんとうに価値あるもの)/アメリカの見えない徴兵制(携帯で軍に勧誘される高校生たち;落ちこぼれゼロ法案;巧妙に仕かけられた罠;夢を見せてやるんだよ;戻ってきてくれて、ありがとう)/見えない列車に乗せられる若者たち(殺しのマシーン教育;兵士たちのグッバイレター ほか)/未来を選び取る自由(軍事化される子どもたち;最大のターゲットはマイノリティ ほか) 。この本もアメリカの格差社会を描いている。しかも、グローバリズムの内側という視点から、アメリカの戦争とからめて描いている。
それぞれ、研究者の報告は、これらの著作の意味を、丁寧に見せてくれたけれど、そういった提起を手がかりに、私も、アメリカのいまについては、しっかり見ていきたいと思ったのであった。
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