娘に語るお父さんの歴史
ずいぶん前に、重松さんがNHKのブックレビューに出演していて、この小説について語っていた。それで、読んでみようと思って買っていたんだけど、読めずにいたのを、このキャンプに行っている間に読んだ。重松さんの本だから、それはそれで面白いんだけど、うーん。ちょっとね。
小説の主人公より私のほうが少しうえの世代。その人生は、もう歴史だそうだ。
テレビや漫画があり、食べ物もたっぷりあった。自分の勉強部屋があった。病気で死んでしまう友達や経済的な事情で高校に進めない友達はめったにおらず、高望みさえしなければ将来の夢を邪魔するものはなかった。
敗戦から間もない時期だが、日本は「東洋一」を目指し「世界」に目を向けていた。交通事故の犠牲者が急増し、公害患者が出るなど負の面も大きかったが、カズアキは「幸せな時代だった」と振り返る。一人ひとりの、ニッポンの、世界の未来を「信頼」し、全力疾走できることこそ幸せだったと結ぶ。
との紹介があるが、たしかに、書かれている時代は実感として、近いものがあるんだけど。なぜ、うーんなのか、2つのことを感じたりした。1つは、やっぱり、もう少し貧しかったんじゃないか。もう少し汚かったんじゃないか、みたいな感覚。私の住んでいた町も、やっぱり汚くて、近所には、共同トイレの長屋なんかもまだまだたくさん存在していた。もう1つは、前進したのは、次の時代を切り開いたのは、科学の発展だけだったのだろうかということ。やっぱり、負の側面にはそれに抗した運動があり、そんなふうに、時代に向き合った人の格闘があったんじゃないかということ。家族への思い、子どもへの思いは胸を打つけど、それだけに流し込まれるとちょっとね。そんな感想ももってしまいました。
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» 【娘に語るお父さんの歴史】 重松清著 [じゅずじの旦那]
《1963年生まれ、“普通のおじさん”であるカズアキが、自分が生きてきた昭和の時代を娘に語る。戦争を体験した前の世代のような強烈さはないものの、確かな歴史が感じられる。》
重松さんモノととしては毛色の違う本。いろんなところで含み笑いしちゃう本です。はっきり言って…泣けません!
《奥さんが一人(二人いたら困る)。・・・》
という、寒いジョークもままあり。
《街頭テレビの時代には「他人と一緒に観るもの」だったテレビは、「家電」になって居間に鎮座したとたん、「家族と一緒に観るも... [続きを読む]
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