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2006/05/21

学テ最高裁判決30年

 30年前の今日は、最高裁で、旭川学テ事件の最高裁判決が下った日だ。ここのところ教育基本法のことを中心に仕事しているので、この学テ判決も、再び、あの難解な判決文に目を通したりしている。もともと、原告敗訴の判決だから、かならずしもいいことばかり書いてあるわけではない。しかし、60年代以降、文部科学省が、教育基本法の形骸化をすすめるなかで、国家の教育権というものに固執をし、国民の教育権や教育の自由ということをガンと認めようとしなかった時代、最高裁の判決として、はじめて、一定の制限があるとはいえ、そういう考えをみとめた点で、画期的な意味をもつ。はじめは、教育運動の側でも、この判決文は、そんなに注目されていたわけではないようだが、当時、都立大学にいた兼子仁先生などが、注目して、その点が大事にされるようになった。判決から数年後、私は、兼子先生の「教育法」の集中講義を、受ける機会があった。この期に、当時、先生が書かれている論文を2,3読み直したりしている。
 大事なのは、憲法の13条、23条、26条にもとづいて、論じているところだ。
 兼子さんの『教育法』という方には、次のように書かれている。

 第一に、制約を強調する表現ながら、日本国憲法上における国民と教師の各種の教育人権の存在を最高裁判例として初めて公認した。憲法二六条の条理解釈として、「子ども」をはじめ国民各自が「人間・市民として成長・発達し人格を完成するために必要な学習をする権利」を持つものと、一定の「学習権説」を採用し、それに対応して「親の教育の自由」と「私学教育における自由」を肯認している。また、「子どもの教育が教師との直接の人格的接触を通じその個性に応じて行われなけれぱならないという本質的要請に照らし、」憲法二三条学問の自由のうちに「一定の範囲における教師の教授の自由」がふくまれていると解しうるむねを判示したことによって、かねて学問教授の自由を大学に限定していたポポロ事件判決(最高裁昭和三八・五・二二)を実質的に判例変更することとなった。

 そのうえで、判決は、以下のようにいうのだ。
 教基法は、憲法において教育のあり方の基本を定めることに代えて、わが国の教育及び教育制度全体を通じる基本理念と基本原理を宣明することを目的として制定されたものであつて、戦後のわが国の政治、社会、文化の各方面における諸改革中最も重要な問題の一つとされていた教育の根本的改革を目途として制定された諸立法の中で中心的地位を占める法律であり、このことは、同法の前文の文言及び各規定の内容に徴しても、明らかである。それ故、同法における定めは、形式的には通常の法律規定として、これと矛盾する他の法律規定を無効にする効力をもつものではないけれども、一般に教育関係法令の解釈及び運用については、法律自体に別段の規定がない限り、できるだけ教基法の規定及び同法の趣旨、目的に沿うように考慮が払われなければならないというべきである。
 ところで、教基法は、その前文の示すように、憲法の精神にのつとり、民主的で文化的な国家を建設して世界の平和と人類の福祉に貢献するためには、教育が根本的重要性を有するとの認識の下に、個人の尊厳を重んじ、真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的で、しかも個性豊かな文化の創造をめざす教育が今後におけるわが国の教育の基本理念であるとしている。これは、戦前のわが国の教育が、国家による強い支配の下で形式的、画一的に流れ、時に軍国主義的又は極端な国家主義的傾向を帯びる面があつたことに対する反省によるものであり、右の理念は、これを更に具体化した同法の各規定を解釈するにあたつても、強く念頭に置かれるべきものであることは、いうまでもない。

 兼子さんは、「このように最高裁学テ判決は、以後の教育法形成の動態がそれをのりこえてさらに進展していきうる最低限の教育法原理的な土台をもたらしたと見てよいであろう」と。
 この憲法を土台に論じた最高裁の判決そのものの、観点を押し流そうとする(もちろん、文部科学省は、違う解釈をしているのだが)。今回の「改正」が憲法をどう見ているのかがわかるというものだ。

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» 「子どもの教育内容に対する国の決定権能を否定する理由はない」と言う判決 [飯大蔵の言いたい事]
教育基本法の審議が始まり、NHKで国会中継があった。その内容はインターネットの衆議院TVでも見られるので興味ある人は見て欲しい。しかし全体のレベルは高からず高からずなので、失望すること請け合いである。  そのなかで、国の教育権は最高裁の判決で認められたと言う発言が有った。いわゆる学テ判決のようだ。その判決文の一部を引用した。判決文なので読みにくいが、辛抱してください。 まず親は、子どもに対する自然的関係により、子どもの将来に対して最も深い関心をもち、かつ、配慮をすべき立場にある者として...... [続きを読む]

受信: 2006/05/24 16:23

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