国家の品格 の危うさ
『国家の品格』という本がベストセラーになっています。藤原正彦さんは、いろいろ面白い発言をされている数学者ですが、今度の本は、教育基本法にかかわって、与党の人たちが熱心に学んだということも言われていますので、どんな本なのかと、読んでみました。
なかなか論評しにくい本です。主題そのものが、論理には限界があるというものなので、氏の議論そのものの論理の展開が、途中でブツッととぎれてしまいます。そして「限界がある」と言われてしまえば、議論にならないというか…。
個々の論点は、すべて批判すべきだとは思いません。イラク戦争は批判しているし(苦笑)。
なぜ、こんな本が、ベストセラーになるのかということも、大事な問題だと思います。急速な、グローバル化の進展のなかで、格差と競争の社会がすすみ、そのことへの不安感の反映があるのは事実だと思います。それが、「祖国愛」だとか、「国家の品格」という正体のつかめないものに流し込まれると、いささか同意はしにくいなあと思わざるをえません。しかも、そういった、情緒なるものは、説明のできないもので、大人が子どもに、押しつけるしかないといいます。もちろん、それは、国家が強制するものとは言ってはいません。氏はわざわざ、それはナショナリズムとはちがう、パトリオティズムに近いものだと言っているのですが。しかし、その違いは、偏狭であるかないかというだけで正体はわかりません。
考えてみれば、愛国心、そのものにはいろいろなものがあります。そこで結局、問われるのは、その裏側にある社会認識がどういうのもかということなのだとも思うのです。つまり、愛国心がいいのか悪いのかなどと議論するのはそれほど意味があることではないのかもしれません。しかも、子どもたちとの関係で言えば、そうした価値意識を押しつけることは、内心の自由にかかわるというだけでなく、社会認識の形成のあり方から言っても誤っているということが大事なのなかとも最近思います。
著者が、現在の社会状況をどう考え、どういった意図をもって、この本を書かれたのかはよく分かりません。いずれにしろ、上記のような理由から、きわめて”危うい”なあと思わざるをえない一冊でした。いかがでしょうか。
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» 教育基本法改定〜これも国民の知らないところで,不要な変更を… [情報流通促進計画 by ヤメ記者弁護士]
共謀罪同様,国民の知らないところで勝手に法律をつくろうとしている例としては教育基本法がある(ここ←参照)。もちろん,このブログを読んで頂いている方の多くはご存じだとは思いますが,時間が忙しく,本文をチェックしていない方もいると思いますので,念のため,この話題を取り上げます。しかし,国民不在の議論としては本当に典型例(ばかりという感じもするが…)だ。
現在の教育基本法(ここ←)に書いてある教... [続きを読む]
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