憲法「私」論
お約束の、水島さんの『憲法「私」論』の感想です。インタビューという制約から随所におおざっぱな展開もあるし、20世紀の歴史の問題や、京都の蜷川府政に関わる問題など、いくつか承伏しがたい論点もあります。いちばん、気になるのは、あまりにも「個人」にこだわる点です。もちろん、憲法は個人の価値、個人の尊厳というものを何よりも基礎においているわけですから、それはそれとして理解できないわけではありません。が、ここまで、「個人」を強調されると、憲法をめぐってたたかうためには、強い個人でなければならないと言われているような気がしてしまうという点です。でも、個人の価値を認識したりするのは、他人がいてこそ。最初は頼りあったり、依存しあったりしてもいいじゃないですか。新自由主義のイデオロギーでバラバラにされている時代だからこそ、もっと連帯や共同に光が当たってもいいよなあなんて思います。
でも、平和を真摯に求める議論は、十分説得力もあります。数少ない軍事法制の専門家ですから、軍事裁判などの問題をはじめ、なるほどと納得させられる論点も少なくありません。
直接、軍事法制とは関係ないけれど、なるほどと思ったのが、1つは、改憲論議の作法。「改憲の必要性について、改正を主張する側に高度の説明責任が課せられる」「きちんとした情報提供と、何よりも、自由な討論が保障されなければならない」「熟慮のための十分な時間(期間)が保障されていること」。これって、いまの教育基本法「改正」にもあてはまります。
もう1つが、国民投票法案について、この点では憲法96条は、他の条文と違って「法律に定めるところにより」などの文言がなく、憲法自身が積極的に国民投票法の制定に言及していないという指摘です。つまり、それが必要となったときに定めればいいということです。改憲の案すら国会で議論されていない現在、国民投票法の制定で、改憲の機運を高めようというのは姑息です。そんな点も学ばされました。
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