いま平和とは
岩波新書新赤版の1000冊目。はたして私は新赤版は何冊読んだだろうか? さてこの本は国際法の最上先生による三冊目。最上さんの本は、岩波新書はいちおう読んでいます。21世紀に入っても武力紛争や大規模な人権侵害は止むことがない、そして暴力と憎悪の連鎖が続いている…。パレスチナを見ても、世界には、新たな分断線が引かれ始めた。いかにすれば、人間は対立を超えて真に和解できるのか、20世紀から21世紀にかけての国際法の分野、国際機構の分野でのとりくみを紹介しながら、その道を探る。『国連とアメリカ』などでは、どちらかと言えば、国際的な秩序を破壊するアメリカへの批判が先にたち、厳しさと絶望感が漂っていた。が、この本では、希望を語る。もっと力強い世界の流れはあるんだと私流にが言いたいところもあるんだが、NGOやさまざまな人々の新しいもう1つの世界をめざす流れに希望を語っている。最後のフロムやヴァイツゼッカーの希望についての語りは十分胸に迫ってくる。
でも、いちばん印象に残ったのは、ルワンダでのUNAMIRに派遣されていた司令官のダレールの話。この分野の本としては、きわめて分かりやすく読みやすい1冊。
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» 国際法の専門化の”魂”を感じる一文 [帆をたて海に出よう]
最上敏樹『いま平和とは』(岩波新書)を読み始めました。 最上さんと言えば、国際法の専門家で、これまでも何冊か読んでいますが、その度に、大変学ばされている人です。しかし、内容はけして簡単とは言えないな、という印象があった人なんですが、本書は冒頭から、ボブ・デ..... [続きを読む]


こんばんは。私もこの本について書いたので、トラックバックさせてもらいます。なるほど、と思ったのは、前著では「厳しさと絶望感」が漂っていたっていうことです。言われて、確かにそういう印象があったことを思い出しました。憲法が専門の方が書いた「平和」の本は多いですが、国際法の専門家が”平和”という視点から語るという本は、貴重だと思いました。岩波も、この本を新書1000冊目にもってくるとは、憎い演出だとも思いましたよ。
投稿: 洋 | 2006/04/15 02:27