強いられた死を準備したもの
三四郎さんのブログを見ていたら、ゼロ戦についてのNHKの番組が紹介されていました。去年のNHKの教育番組で、『ETV特集・零戦ニ欠陥アリ~設計者達の記録~』という番組がを今年の3月8日の『その時歴史が動いた』でも「ゼロ戦・設計者たちが見た悲劇~マリアナ沖海戦への道~」として編集・再放送されていたそうなのです。番組では、第二次大戦初期には無敵(スピードが当時、世界最速)を誇ったゼロ戦であったが、「無敵」というのは人命を軽視して機体を極限までに軽量化してはじめて実現されたものであったこと。そのため、「無敵」・「最強」のはずだったゼロ戦は、実は開発当初から重大な問題を抱えていたといいます。最大の問題は、当時の空中戦(航空機同士の戦闘)に不可欠の動作であった「急降下」を行うと、機体に無理な力が加わり、また強度不足のために空中で分解してしまうということだったというのです。
ぜひ見たかったなあと思います。ここにも、兵士たちに死を強いた日本の戦争の特徴がよくあらわれていると思うのです。そんな関心から、今日、職場にあった、山田朗編の『戦争Ⅱ――近代戦争の兵器と思想動員』という本をパラパラと読んでみました。これがまたおもしろいのです。
日本の戦争を支えたものを見てみると、たとえば戦争のソフト(戦略)という点では、陸軍では、世界が火力中心になっていくなかで、日本は日露戦争後白兵至上主義に傾斜していきます。そこから、玉砕を称え、捕虜を冷遇し、捕虜になることを否定する考え方が広がり、あの「戦陣訓」になっていきます。その帰結が特攻であることはいうまでもありません。それは、システム=法律の面では、当然、国際法の軽視、蹂躙へとすすみます。そして兵器の面では、先のゼロ戦であり、陸軍で言えば粗末な戦車であったりします。たとえば、靖国神社の遊就館には戦車(たしか97式でしょうか?)が展示してありますが、その車体の薄さはさわって驚かされます。
ゼロ戦で言えば、そもそも、海軍は最後まで、巨大艦船中心主義を捨てきれず、航空機に力をそそぐことはなかったわけです。それがきわめていびつな性能をもつゼロ戦だというわけです。
戦史だけではなく、こういう面(戦争をささえたもの)を見ても、日本の戦争の性格がよく見えてきます。
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