姜尚中の政治学入門
姜尚中さんは、言うまでもなく、気になるオピニオンの1人です。ナショナリズムの問題もふくめ、その鋭い議論は、私にとってもとても刺激をうけてきました。
さて、その姜尚中さんの新著がこの新書ですが、あいかわらず十分読みごたえはあります。
入門書ですが、政治学の理論書という面ももちます。ナチズムをはじめ、政治権力の暴走に、思想家たちはどうむきあってきたのか。学ぶべきことはたくさんあるなあと、とても刺激にもなりました。
ただ、理論の面にもふれたものですから、どうしても違和感をもらざるをえない点もあります。たとえば、現在において天皇制がどのような政治の面でのポイントになっているか、なども私の理解とはちがいます。ナショナリズムの形成のなかでのひとつの装置ではあることは同じですが。
歴史認識などについても、ちがうかなあ。歴史の相対化ということにたいする理解がちがうのです。ドグマが大きな力をもった時代のあとには、認識の相対化が必要なことは事実です。が、まったく基軸もなく相対化するのはどうでしょうか。その結果、姜さんのもちあじであるリアリズムが、なんとなく観念的なものになっていると思えますが。このあたりはアジアの問題のとりあげかたにもあらわれています。
日本のいまを考えるとき、戦後の総括にもどって考えるべきだという指摘は同感です。
姜尚中さんとは2度ほど、あいさつだけ(一言二言の会話)をかわしたことがある程度です。これからも注目はしていた人ですよね。
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