西山事件って知ってますか
西山事件って知っていますか? 外務省機密漏洩事件ともよばれ、沖縄返還協定をめぐって、国際法上の義務である軍用地の返還に伴う復元の補償で、米国が払う事となっている400万ドルを、実際には日本が肩代わりするという密約があったことを毎日新聞社政治部の西山太吉記者がスクープ。1972年に外務省の機密文書漏洩の疑いで西山記者と外務省の女性事務官が逮捕された事件です。2人の個人的な関係をとりあげ、いかなる取材方法でも報道の自由は無制限に認められるかが争点となり、西山氏らが有罪に問われました。
その後、2002年、「米国立公文書館保管文書の秘密指定解除措置」で公開された「ニクソン政権関連公文書」の中から密約の存在を示す文書が見つかりました。報道は事実だったのです。そして、長く、その密約の存在を否定していた外務省が、2月8日、共同新聞の取材に対し、対米交渉を担当した当時の外務省アメリカ局長が、「返還時に米国に支払った総額3億2000万ドルの中に、原状回復費用400万ドルが含まれていた」と述べ、関係者として初めて密約の存在を認めたのです。
今日の沖縄タイムズの社説が、この事件をとりあげていました。密約が「国家権力によってないものにされた事実については決して忘れてはなるまい」と指摘します。国家の犯罪を告発した記者らを、国家公務員法違反容疑で犯罪者とした政府の責任の重さも指摘しています。そして、「西山氏とともに取材を続けながら、政府の意図に乗る形で『記者と外務省職員のスキャンダル』に終わらせてしまったメディアの責任も問われなければなるまい」と自省しています。本土のメディアにこういった議論がないことは残念ですが、この問題もわれわれが歴史の見直しとして、考えるべき問題でしょう。
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» あの西山太吉氏が丸激に来てくれました [ビデオジャーナリスト神保哲生のブログ]
丸激第256回 [2006年2月23日収録] 日米偽装同盟はここから始まった ... [続きを読む]
アメリカ政府の元担当幹部が核密約を証言してもなお、日本政府は認めませんね。政府に都合の悪いことは何があっても認めないということでしょうね。BSEも同じような経過だと思います。
西山さんは名古屋のシンポでお呼びしました。また核密約問題をドキュメントにしたメーテレのTディレクターも私たちの会に来ました。彼女はいま沖縄に帰ってしまったようですが・・・メディアがこれをまともに報じない中で頑張っていたのですが。
名古屋では労働組合と市民団体が一緒になってメディア問題のシンポを続けています。
西山さんもその一つです。3月は「権力のメディア取り込みを許さないために」のテーマで開催します。
日時 3月11日(土)13時30分
シンポジスト
○中日新聞常務取締役・編集担当
小出 宣昭氏(前編集局長)
○放送を語る会事務局長
小滝 一志氏(元NHKディレクター)
「戦時性暴力を裁く国際法廷」のビデオ上映
○中日新聞社会部記者
斎田 太郎氏(愛知県警担当キャップ)
会場 愛知民主会館(名古屋・新栄)です
投稿: くれちゃんマン | 2006/02/18 21:21
私は西山氏を過剰に「権力闘争の英雄」扱いとすることには非常に懐疑的です。
特に西山事件を「国家の密約という本質を失った事件」とする論調には非常に反対です。
なぜならそれこそが物事の本質を見失ってると言わざるを得ないからです。
本質とは何か?
それは「不正な過程で得た結論はその内容の如何を問わずに防いである」との事実です。
これが報道にのみ許されるのであれば、当然国家にも許されるべきであり、それはすなわち旧刑事訴訟法時代の拷問すらも許される暗黒の権力統治時代の幕開けを許すことにつながるのです。
また、メディアにのみこれを許し、権力にこれを許さないとするのであれば、それはメディアの横暴を許し、民主主義政府の否定につながります。
但し、これらの危険について言及するメディアは一切ありません。
また、彼らと密接に結びついている知識人、市民団体からもそれらの危険性が指摘されることはありません。
その理由は言わずもがなです。
本当の本質とは一体何なのか、1つの権力の不正追求に腐心する余り、未来永劫無数のメディアという巨大権力の不正を許す、そんなデタラメだけはあってはならないと思います。
投稿: 小島 | 2007/01/16 12:08